岸田文雄首相のウクライナ訪問と時を同じくし、中国の習近平国家主席がロシアを訪問しプーチン大統領と面談したことが、中露の接近を一層浮き彫りにしたと報道された。
中露は接近しているが、習近平国家主席はロシアのプーチン大統領を恨んでいるかもしれない。ロシアの戦争のおかげで中国リスクもはっきりと認識されるようになった。習近平国家主席には迷惑なリスクの顕在化だ。
ロシアのウクライナ侵略により、西側諸国はエネルギーをロシアに依存する大きなリスクを認識し、一斉にロシア産エネルギー離れを始めた。
1973年の第一次オイルショック時、世界は中東の産油国にエネルギー供給を依存していた。その後の主要国のエネルギー供給源分散の結果、中東に代わりロシアが世界のエネルギー供給国になった。
主要国は、天然ガス、石油、石炭、核燃料の供給までロシアが大きなシェアを持っていることを改めて認識した。同時に強権国家に重要資源・エネルギーを依存する大きなリスクにも気がついた。
その結果、西側諸国は今ままでも認識していた中国リスクがいかに大きいか、はっきりと理解することになった。今欧米を中心に脱中国産原材料が具体化しつつある。
主要国は脱炭素を進めるため、再生可能エネルギー(再エネ)の導入を増やす必要がある。再エネ設備にはレアアースなどの中国産原材料が必須だが、欧州連合(EU)、欧州委員会(EC)は重要な資材・原料を1カ国に65%以上依存しない法案を今月明らかにした。具体的に脱中国を進める法案だ。
一方、欧州の目の前には米国が立ちふさがっている。バイデン大統領はトランプ政権の保護主義的政策を引き継ぎ、米国製品の購入を促す「バイアメリカン」を露骨に進めている。
おまけに、脱ロシア産エネルギーで苦慮する欧州とエネルギー自給率100%を超えた米国とのエネルギー価格の差は開くばかりだ。EU諸国は、自国の企業が「バイアメリカン」と「エネルギー価格」の恩恵を受けるため米国に工場を移転するのではないかと警戒し始めた。
「脱中国」と「バイアメリカン」に直面したEUは、域内での重要原材料の生産拡大を打ち出し、ドイツは米国に対抗するため税投入による産業用電気料金の大幅引き下げを示唆している。どちらの対策も日本が取り組むことは難しい。どうする日本。正念場だ。