高騰している電気・都市ガス料金は2023年に下がるのだろうか。欧州では天然ガス価格がピーク時からは下落したが、エネルギー危機前との比較では高騰したままで、料金もまだ元には戻らない。
日本の電気料金には、発電の30%以上を担う石炭の価格が大きな影響を与えるが、昨年史上最高値を更新した価格はほとんど下がっていない。
脱ロシア産化石燃料を進める欧州諸国が世界中で石炭を買い漁っているためだ。「血まみれ」と呼ばれる石炭にまで手を出している。石炭価格が下落する可能性は薄く、日本の電気料金が今年下がる可能性も小さい。
欧州は脱炭素よりも石炭を手当
欧州では暖冬により暖房と給湯を担う天然ガス消費量が抑制され、天然ガス価格が下落した。と言っても、欧州の昨年12月の月間平均の天然ガス価格は、エネルギー危機発生前の20年年末との比較では、6倍だ。価格は年末にさらに下落したが、今年初めの時点でも依然として3倍の水準にある。
昨年8月末、ロシアがノルドストリーム1・パイプラインからの供給停止を脅かした時には、価格が20年末のレベルから十数倍にも高騰したので、それからすれば落ち着いたが、依然電気、都市ガス料金はロシア侵略前との比較では高値に張り付いている。
暖冬のおかげで天然ガス消費量を節約することができ、今年の供給は安心かと言えば、そうでもない。21年欧州連合(EU)の天然ガス輸入量の4割以上を占めていたロシアのシェアは、22年約2割まで落ちた(図-1)。特に昨年後半に供給量は大きく落ち込み、シェアは10%を割り込んでいる(図-2)。
このロシアの供給状況が続けば、春から夏にかけ行う冬季に備えた在庫の積み増しが難しくなり、液化天然ガス(LNG)の大きな供給増を期待できない今年の冬には天然ガスが不足する可能性がある。
天然ガスはEUの一次エネルギー供給の23%を占め、電力供給の20%を占めている。天然ガスを節約するため多くの欧州諸国が取り組んだのは、休止していた石炭火力の再開と稼働中の設備の利用増だった。英国、ドイツ、フランスなど10カ国以上が石炭の消費を増やした。
生活の危機、産業の危機となれば、脱炭素・脱石炭もどっかに行ってしまったのだが、欧州諸国は途上国には依然として脱石炭を促している。中には価格が高騰した化石燃料が買えずに停電した国もあるが、価格を上げたのは欧州だ。