2024年4月26日(金)

World Energy Watch

2023年1月11日

化石燃料依存と高値は続く

 ロシアのウクライナ侵略はエネルギーの世界を大きく変えた。多くの国は1973年の第一次オイルショック以降進めてきたエネルギー安全保障政策の見直しを迫られた。50年前、主要国はエネルギーの大半を石油に依存していたが、突然の値上げと輸出制限の経験から脱石油を進め、天然ガス、石炭、原子力へ多様化を進めた。

 日本も例外ではなく、73年当時、一次エネルギーと発電源の8割近くを依存していた石油から、LNG、石炭、原子力に分散を進めた。東日本大震災後、原子力の発電に占める比率は低下したが、それでも今発電に占める石油火力の比率は10%以下。LNGと石炭火力が発電量の3分の2を占める。

 世界の多くの国も、天然ガスと石炭への多様化を図った。化石燃料の世界貿易に占める石油のシェアは低下し、石炭と天然ガスがシェアを大きく増やした(図-3)。しかし、その結果ロシアへの依存が深まった。50年前の産油国に代わり登場したのは、世界一の化石燃料輸出国ロシアだった。

 今、世界の国は「分散」から「自給率向上」へ安全保障政策の再構築を迫られている。自給率の切り札は、再生可能エネルギー(再エネ)と原子力だ。だが、時間が掛かる。

 再エネ導入には送電線の整備も必要になり、さらなる時間と費用が掛かる。原発の建て替え、新設も時間が必要だ。

 その上に、強権国家、中国への原材料の依存を低減させる必要があるのだから、時間はもっと必要になる。少なくとも数年、あるいはそれ以上の期間、化石燃料に依存せざるを得ない。待ち受けるのは、高エネルギー価格の時代だ。電気料金と都市ガス料金は当面高値のまま推移することになるだろう。 

誰が化石燃料価格を上げたのか

 石炭火力の利用増を図っているドイツの化石燃料による発電量の推移は、図-4の通りだ。石炭の利用増を進めている欧州の22年の石炭・褐炭消費量は、6億8500万トン。20年5億8500万トン、21年6億4900万トンから2年連続の増加だ。

 増加する数量を輸入する必要があるが、EUでは昨年8月10日からロシア産石炭の輸入は禁止になった。22年前半のロシアからEUへの輸入数量は、前年同期とほぼ同じだったが、後半の数量は大きく落ち込み(図-5)、21年5200万トンの輸入数量は、22年約2000万トン減少したと推測される。

 ロシアの落ち込みと増加する需要量を埋めたのは、コロンビア、米国、南アフリカ、豪州などからの石炭だったが、生産増があったわけではない。どうしてEU向けに供給できたかと言えば、インド、中国、パキスタンなどへの出荷が減少したからだ。価格が高騰した石炭を買えなくなったので停電した国も出てきた。


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