今年10月の消費者物価指数では、電気料金は前年同期比20.9%上昇したが、さらに上がりそうだ。東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の地域の大手電力5社が来年4月からの規制料金の値上げを申請した。値上げ幅は28.08%から45.84%だ。東京電力も値上げを申請する予定と報道されている。
全世帯の約半数が住宅向け規制料金を利用しているので、値上げの影響を受ける世帯は多い。規制料金でなく、自由化された料金を選択している世帯は既に大きな電気料金の値上げに直面しているはずだ。
規制料金と自由料金は何が違うのだろうか。これから、電気料金はどうなるのだろうか。
規制料金と自由料金
2016年4月の電力市場の自由化以前には、家庭用の電気料金には燃料代、減価償却費などの原価に基づき経済産業省により査定された規制料金しかなかった。総括原価方式と呼ばれる制度に基づく料金だ。自由化により消費者は、小売りを行う電力会社と料金メニューを自由に選択可能になったが、消費者保護の観点から規制料金も経過措置料金として残された。
731社(12月5日現在)まで増えた電力小売り会社が設定する料金は、燃料費などが変動すれば、自由に設定可能だが、地域の大手電力に残された規制料金の金額は、燃料費の変動のみを反映する燃料費調整制度により毎月値上げあるいは値下げされる。
ただし、ここでも消費者保護の観点から燃料費の変動を電気料金に反映させる上限価格が設定されている。要は、燃料費が上がっても、電気料金が一定額以上は上がらない制度だ。
規制料金の値上げが必要となったのは、21年半ばから引き起こされた欧州発のエネルギー危機と円安により、日本の発電量の約4分の3を占める火力発電の燃料費が高騰し、規制料金の燃料費調整制度の額が北海道から沖縄までの大手10電力全てで上限額に達し、燃料費を賄うことができなくなっているからだ。
日本の家庭の約23%は、自由化後大手電力から新電力と呼ばれる小売事業者に切り替えている。また、大手電力の契約の約32%は自由化された料金メニューに切り替えている。
その結果、今年8月時点では図-1が示すように、契約口数では約52%、販売電力量比では約33%が規制料金の下で電力供給を受けている。約半数の世帯は規制料金を選択していることになり、料金値上げの影響は広範囲の世帯に及ぶ。