電気料金は上がり電気も十分にない国に
政府の電気料金負担軽減策を受け、大手電力は電気料金を来年1月から9月まで引き下げることを発表している。1月から8月まで家庭用では1kWh当たり7円、9月は3.5円値下がりする。
欧州諸国は、エネルギー価格抑制に大きな補助金を投入しているが、それでも電気料金は大きな値上がりとなっている。日本でも同様に補助金投入しても大きな値上がりが今後発生することになるとみられる。
料金の値上がりが続く中で、資源エネルギー庁からは「冬季の省エネ・節電にご協力ください」として12月1日から来年3月31日までの節電要請が出されている。
電気料金が大きく値上がりする中で節電が必要になるのは、原発の再稼働が進まず安定的な供給力が不足する中で再生可能エネルギー設備が増えたからだ(「原発再稼働と新増設が必要なこれだけの理由 」)。12年の固定価格買取制度導入後、太陽光発電など再エネからの発電量の買取に使われた資金は、今年6月までで約22兆円だ。化石燃料消費量の減少分を除いて大半は電気料金の形で負担された。国民1人当たりでは、ゆうに10万円を超えている。
資金の一部でも安定電源の確保、原発の再稼働に投入していれば、いま化石燃料の消費量はこれほど増えず、節電要請も行われなかっただろう。安定電源の原発の再稼働を急ぐことが今の日本には急務だ。
規制料金の値上げ申請は、これから「みなし小売電気事業者 特定小売供給約款料金審査要領」に基づき審査される。厳格な審査が行われることは当然だが、発電設備が老朽化し故障が相次いでいる現状を踏まえれば十分な補修、投資を認める必要がある。
人件費についても考える必要がある。電気料金の中には人件費も含まれている。日本企業は失われた30年と呼ばれる平成の期間人件費を抑制する傾向が強かった。この結果が主要7カ国中最低の平均賃金を招いた(図-5)。賃上げによりこの悪循環を断ち切る必要がある。
電気料金に占める人件費の額は1kWh当たり0.5円から0.7円と試算される。電気料金に占める比率は2%程度だ。すでに申請時点で人件費については電力事業者が厳しく見積もっている。成長と分配の好循環という謳い文句は、本当なのかも試される審査になる。
地球温暖化に異常気象……。気候変動対策が必要なことは論を俟たない。だが、「脱炭素」という誰からも異論の出にくい美しい理念に振り回され、実現に向けた課題やリスクから目を背けてはいないか。世界が急速に「脱炭素」に舵を切る今、資源小国・日本が持つべき視点ととるべき道を提言する。
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