2022年10月7日(金)

World Energy Watch

2022年8月25日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 岸田文雄首相は8月24日、GX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議で「原子力規制委員会の審査を通っている7基の原発について来夏以降に再稼働を進める方針」を示すと同時に、「既存原発の最長60年の運転期間の延長の検討」と「次世代革新炉の開発・建設など原発の新増設について年内に結論を出すように」指示したと報じられた。

新たに再稼働を目指すことにした福井県の高浜原発(田中正秋/アフロ)

 いま世界では、ロシアのウクライナ侵攻を受け、原子力発電に関する世論が大きく変化し、原発の利用を支持する意見が増えている。例えば、ドイツの世論調査では「今年末に閉鎖が計画されている3基の原発の継続利用を支持する」意見が、4月に過半数、6月に約3分の2、8月に発表されたドイツ公共放送網の調査では8割を超えた。

 最新の調査では、脱原発を旗印に掲げる緑の党の支持者間でも原発利用支持が6割を超えた(ただし、長期に亙る利用の支持は7%)。かつて脱原発を支持していた多くのドイツ国民は、高騰する化石燃料の利用を削減し、エネルギー価格を抑制する方法として原発の利用を支持するようになった。

 米国においても、8月16日、バイデン大統領の署名により成立した「インフレ抑制法」の中に既存原子力発電所の運転と新増設、さらには原発利用による水素製造を助成する制度が盛り込まれ、政府が既存原発の利用と小型モジュール炉(SMR)などの新設を支援する姿勢を鮮明にした。

 欧米の主要国が原発の継続利用と新増設に乗り出す中で、日本も原発利用に舵を切ったが、既存原発の運転延長、新増設には立地する地元の理解を得る必要があり、丁寧に進めることが要求される。原発の利用は電力部門からの二酸化炭素排出削減につながり温暖化対策に寄与するのは当然だが、さらに大きなメリットは、電力の安定供給、電気料金抑制、産業振興にある。

 特に、産業振興については、韓国企業が米国との提携により革新炉、SMRの輸出に乗り出す姿勢を見せているだけに、日本企業はこれから巻き返す必要がある。加えて、将来の水素利用を見据えて米、仏などが力を入れる原発の電気を利用した「グリーン水素」製造にも早く乗り出す必要がある。国際競争はこれからだ。

既存原発の再稼働による電気料金抑制

 既存原発の再稼働により、まず電気料金の抑制効果が期待できる。いま火力発電所が日本の発電量の4分の3以上を供給している。液化天然ガス(LNG)火力が約4割、石炭火力が約3割、石油火力が約7%だ。

 図-1が欧州主要国と日本の発電量における火力発電の比率を示している。火力発電比率が高いイタリアの7月の電気料金上昇率は、政府の補助金にもかかわらず前年同月比85.3%になっている。日本の7月の電気料金上昇率は19.6%(総務省消費者物価指数から)だが、日本では燃料価格の上昇が電気料金に反映されるのには数カ月の遅れがある。

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