2024年12月10日(火)

World Energy Watch

2022年11月24日

 エジプトで開催されていた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が11月20日に閉幕した。会議で最も大きな話題になったのは、途上国が温暖化により引き起こされたとされる自然災害により被った「損失と被害」(Loss and Damage)の補填を先進国に要求したことだった。

(ロイター/アフロ)

 今回のCOPへの出席を見送った環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが、かつてダボス会議で政治家と企業人を前に「あなた方はお金の話ばかりしている」と非難したことがあったが、いまやCOPは途上国がお金の話をする場になった。

 自然災害がすべて温暖化によるものか疑問もあると思うが、多くの先進国は温暖化が自然災害を拡大させているとの立場を支持しているので、途上国の要求を正面から拒否するのは難しい。最近被害が拡大している背景には、人口が増え経済が発展し被害にあう人工物が多くなっていることもあるが、それも指摘するのは難しいだろう。

 欧州連合(EU)は、「先進国がすべて支出するのではなく今温室効果ガス排出量世界一の中国、あるいは産油国カタールなども分担すべきであるし、補填の対象となるのは脆弱な国に限定されるべき」と指摘した上で途上国の要求を受けた。結局、支援のための基金の設立が決まり、来年のCOPに向け拠出国、対象国の範囲などに関し具体的な検討が続くことになった。

2035年に訪れる自動車産業の節目

 COP27の会場では、二酸化炭素(CO2)排出量の約2割を占める運輸部門、特に乗用車からの排出削減についても議論が行われた。昨年、英国グラスゴーで開催されたCOP26では、英国政府が電気自動車(EV)導入促進案への署名を提案した。その継続のため英国政府はCOP27 の場でCO2排出量ゼロの車(ZEV)の導入を加速する連合(Accelerating to Zero Coalition)を発足させた。

 COP26からの1年で、世界でのZEV導入の動きはさらに加速している。EUは2035年から内燃機関(ICE)を持つ自動車(乗用車とバン)の販売禁止に踏み切ることを10月に決めた。欧州ばかりではない。

 米国で最も自動車販売が多いカリフォルニア州が同じく35年からICE車の販売禁止に踏み切るが、ニューヨーク州など数州がカリフォルニア州に追従するとみられている。米国で自動車販売の大きい州がICE車の販売を禁止すると自動車製造と販売に大きな影響を与えることになる。

 欧米の販売禁止対象にはハイブリッド車(HV)が含まれており、プラグインハイブリッド車(PHEV)が含まれるかは、国、地域により異なるが、ICEを持つPHEVも対象とされることが多い。いずれにせよ35年が自動車産業にとり大きな節目の年になるのは間違いなさそうだ。

 世界はEVに舵を切ったように見えるが、世界の自動車市場は欧州と米国だけではない。日本は欧米のICE車販売禁止の動きに乗って、ICE車、HVも含めた選択肢を捨ててはいけない。インフラ、雇用、安全保障などEV化よりも前に考えるべきことも多いからだ。


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