私たちは、「食品ロス」とは「食べられる食物を無駄にすること」だから、日本人が大事に思っている「もったいない」精神に反することだと認識している。そのせいか、食品ロス削減は精神論的な香りを帯びてしまうことがあるように思う。果たしてそれだけの問題なのだろうか。
「食品ロス」とひとえに言っても、家庭から発生する「家庭系」と、小売店や飲食店から出る「事業系」の二つに分けられる。家庭にとって食品ロスは「もったいない」という思いから削減を図ることが多いだろうが、事業者にとって食品ロスは経済的・経営的損失である。製造した食品の廃棄の手間や費用はコストとなる。作る時に使われたエネルギーも無駄になってしまう部分もある。
飲食店にとって食品ロス削減は社会課題の解決だけでなく、経営戦略の一環とも言える。本稿では、事業者の積極的な努力と、精神論だけでは実現しない仕組みについてみてみる。
食品ロス削減は進んでいるのか
実は、食品ロス削減は順調に進んでいる。政府は食品ロス量を2030年度までに2000 年度比で半減させることを目標としているのだが、事業系は22年度の時点で目標値に達している。コロナ禍で縮小した外食産業からのリバウンドが懸念されていたものの、21年から22年で再び減少へと進んでいる。
一方、家庭系は減少しているが、まだ目標には達成していない。ただし、飲食店が進めている残ったメニューの持ち帰りによって、事業系の一部が家庭系となっている可能性もある。
現在は、飲食店から持ち帰った後の調査はあまり行われていない。廃棄場所が飲食店から、家庭に移っただけにならないように、持ち帰り後の調査とその対応も必要である。

