「食品ロス」ということばを聴くと、「飽食の国日本」に住む私たちは、世界には飢餓に苦しむ人もいるのにと、胸の奥が少し痛む。小さいころから、食べ物を頂くことは生物の命をいただくから「頂きます」、多くの人が走り回ってこの食事を用意してくれたことを覚えて「ご馳走様」と言い、食べられる物を無駄にしないように「もったいない」精神の中で私たちは育ってきた。
この食品ロス削減へ国も力を入れており、2030年度に2000年度比半減を目標に掲げている。取り組みとして、買い物時に消費期限や賞味期限が近いものから購入することや、調理時に野菜の皮など捨てる部分を少なくすること、会食事に最初の30分と終わりの10分は食事を楽しむ「3010運動」など幅広い。本当に必要なことは何なのか。要因を見ながら考えてみたい。
まだまだ多い家庭内での直接廃棄
まずは現在、私たちの生み出す食品ロスはどのくらいだろう。
図1は消費者庁の「食品ロス削減関係参考資料 2022年6月14日版」を基に日本でのここ数年の食品ロスの推移をみたもので、2013年の642万トンから20年は522万トンに減ってきている。
食品ロスには事業系と家庭系がある。事業系は生産・加工・流通段階で食べられなくなるもので20年は275万トン(53%)、家庭系食品は247万トン(47%)である。家庭系が13年には312万トンであるから、消費者の努力は功を奏していえよう。
世界の食品ロスはというと、1年あたり13億トン。これは世界で消費のために生産された食料の3分の1にあたる。
ここで気になるのは、中・高所得国では、食料は消費の段階で食品ロスが発生しており、低所得国では、生産技術、製造技術の問題などから早期・途中で失われることが多く、消費の段階で棄てられる量はごく少ないことだ(同資料12ページ)。