2022年10月7日(金)

未来を拓く貧困対策

2022年2月24日

»著者プロフィール
著者
閉じる

大山典宏 (おおやま・のりひろ)

高千穂大学人間科学部教授

1974年生まれ。社会福祉士。日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科修了。福祉事務所や児童相談所での相談業務、生活保護利用者の自立支援事業の企画運営等の行政経験を経て、現職。著書に『隠された貧困』(扶桑社新書)『生活保護vs子どもの貧困』(PHP新書)『生活保護vsワーキングプア』(PHP新書)など。

 前回「すぐ隣にある貧困 広がる『子育て応援フードパントリー』」では、子育て応援フードパントリーに焦点をあて、その活動の広がりをお伝えした。2022年2月1日付の朝日新聞では、茨城県の支援団体による県下一斉の食材配布会の開催が伝えられた。コロナ禍で苦しむ子育て家庭が増えるなか、こうした市民活動は広がっていくものと考えられる。

 しかし、一過性の市民活動ではなく、社会のインフラとしてフードパントリーのしくみを整えていくためには、依然として課題も多い。その一つに、日本では、「政策としてのロジスティックス」が十分に議論されていない点が挙げられる。

首都圏物流の配送支援を受けるフードパントリーの運営スタッフ。フードパントリーでは、安定した物流が課題となっている(フードパントリー大宮提供)

 ロジスティックスとは、企業が必要な原材料の調達から生産・在庫・販売まで、物流を効率的に行う管理システムのことをいう。もともとは軍隊用語で、「兵站(へいたん)」と訳される。作戦行動に従って兵器や兵員を確保し、管理し、補給するまでのすべての活動を指す。

 フードパントリー活動を理解するうえでは、従来のロジスティックスのなかで否応なく発生する「食品ロス」に着目した新たな社会サービスであるという視点が欠かせない。

これだけある食品ロス

 農林水産省によれば、企業が生産活動に伴って廃棄する「事業系食品ロス」は309トンで、全体の54%を占める。各家庭から発生する「家庭系食品ロス」は261トンで、両者を合わせれば食品ロス量は570万トンにもなる。国民1人当たりの食品ロス量は1日約124グラム、年間では約45キログラムになる。毎日、お茶碗約1杯のご飯に近い量が廃棄されていることになる。

 19年に施行された「食品ロスの削減の推進に関する法律」の前文では、大量の食料を輸入に頼っている日本の実情を踏まえ、真摯に取り組むべき課題と位置づけ、食べ物を無駄にしない意識の醸成・定着と、貧困、災害等により必要な食べ物を十分に入手できない人々に提供するなど、その活用を図っていくことを目指している。少子高齢化社会が進むなかで、日本は否応なく縮小均衡の経済政策を選択せざるを得ない。限られた資源を有効に配分する「政策としてのロジスティックス」が求めてられているのである。

 この理念に反対する人は、そう多くはないだろう。しかし、理念の実現はそう簡単なことではない。廃棄を前提として食品を製造する企業はないし、購入する個人もいない。それでも、食品ロスが発生するのには、当然のことながら理由がある。その大きな壁の一つが、「誰がそれを運ぶか」という問題である。

新着記事

»もっと見る