社会全体で「ロジスティックス」の最適化を
「首都圏物流は、小売り、スーパー、ドラックストア、工場などへの配送がメインです。配送時間は午前中が大半で、午後は体が開いている。埼玉県内に約150台のトラックが走っている。県内配送であれば、交代でやれば対応できる。フードパントリーは、『余白』を使った活動なのです」
駒形さんは、物流会社に限らず、どの会社にも多かれ少なかれ『余白』は存在するという。『余白』をうまく繋ぐことができれば、もっとよい社会になるのではと考える。
筆者も、たしかにそのとおりだと思う。しかし、『余白』を生かすためには、『調整』という新たなコストが発生する。誰かがビジョンを掲げ、旗振り役になり、利害関係を丁寧に調整していかなければならない。
それこそ行政機関の仕事ではないかとの声もあるだろう。しかし、今度は「縦割りの壁」が立ちはだかる。仮に、「政策としてのロジスティックス」を誰が立案するのかと考えてみよう。国の省庁でいえば、物流は「国土交通省」、食品は「農林水産省」、環境問題は「環境庁」、ひとり親支援は「厚生労働省」、産業振興は「経済産業省」と見事な縦割りである。これに加えて、税制優遇などのインセンティブを検討することになれば「財務省」の役割となる。
現状、フードパントリー活動は、食品ロスの視点から農水省、生活困窮者支援の視点から厚労省が取組を進めているものの、「政策としてのロジスティックス」を考えていこうとすると、国交省を抜きにして話が進むとも考えにくい。元政策担当者としては、頭の痛くなる話ではある。
とはいえ――、これだけ多くのアクターが関係者となるケースも珍しい。見方を変えれば、それだけ多くの関係者が興味関心をもって関わる可能性のあるプロジェクトでもある。10年後、どうなっているのか。しばらくは、目を離せないなと思う。