フードパントリー活動において、首都圏物流は企業からの寄贈品をパントリーに届ける役割を担う。受け取るのは、パントリーの運営者たちである。
運転手には、「これで皆に食料を配れる」「よくぞ運んできてくれた」というお礼の言葉がかけられる。時には利用者から寄せ書きが寄せられることもあり、その笑顔も容易に想像することができる。こうした体験は、企業への信頼や愛着、帰属意識につながる。
社会的な価値や経済的な価値は、その後についてくる。そのことを、駒形さんはあるベテラン社員から学んだという。
「俺たちが荷物を運ばなければ、誰が運ぶんだ」
当たり前が当たり前でなくなったときに、人はその価値に気づく。駒形さんにとっての契機は東日本大震災であった。震災が起きてすぐ、首都圏物流では全社を挙げて被災地に支援物資を運び続けた。
1カ月、2カ月、休みなくトラックを運転する社員。遂に若手社員の一人が音を上げた。「余震が続いていて怖い。自宅には小さな子どももいる。何かあってからでは遅い。もう辞めたい」。
これに対して、あるベテラン社員が叱咤した。「俺たちが荷物を運ばなければ、誰が運ぶんだ。自衛隊や医師は被災地に入って、助けられる命を必死に助けている。そこに必要な物資を運ぶのが俺たちの仕事だ」――。
知らず知らずのうちに、広告代理店の仕事と比べてしまっていた。儲かるか、儲からないか。リスクがあるか、ないか。ベテラン社員の言葉は自分に向けて発せられたものではなかったが、その言葉の重みは忘れられないという。代表として、その思いに応えていきたいと駒形さんは話す。
「物流業界にとって、最も怖いのが事故です。10年、20年と無事故で勤務を続けている人には共通する特徴があります。初心を忘れずに慎重であること、そして、家庭が円満であることです。家庭に不和を抱えていると、仕事にも支障がでる。どうすれば、不安や不満を取り除くことができるのか。
パート・アルバイトを入れて1500人くらいの社員数です。なかにはひとり親家庭もいるでしょう。共働きでも、子どもに一人で寂しい思いをさせている家もあるかもしれない。フードパントリー活動は、社会の不安や不満を取り除く活動だと考えています。会社として活動に協力することで、皆も安心して働くことができる」