2022年10月5日(水)

未来を拓く貧困対策

2022年2月9日

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大山典宏 (おおやま・のりひろ)

高千穂大学人間科学部教授

1974年生まれ。社会福祉士。日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科修了。福祉事務所や児童相談所での相談業務、生活保護利用者の自立支援事業の企画運営等の行政経験を経て、現職。著書に『隠された貧困』(扶桑社新書)『生活保護vs子どもの貧困』(PHP新書)『生活保護vsワーキングプア』(PHP新書)など。

 2021年12月28日、政府は、孤立・孤独の問題を解決するために、24時間対応できる相談体制の整備や人と人との「つながり」を実感できる地域づくりなど、具体策を盛り込んだ重点計画を発表した。会議に出席した岸田文雄首相は、生活困窮、自殺防止、子どもの貧困などの課題が多岐にわたるなかで、不安を抱える方々に必要な支援を届けられるよう、官・民・NPO(特定非営利法人)が連携し、各施策を進めていくことを求めた。

 とはいえ、多くの人にとって、孤立・孤独対策といってもイメージが湧かず、どこか他人ごとに聞こえるのではないだろうか。たしかに、報道の多くはコロナ禍で顕在化・深刻化した孤独・孤立の現状を報じることはあっても、その具体的解決の道筋を示すものは少ない。

 しかし、よく目を凝らすと、社会の片隅では確実に変化の兆しがみえはじめている。本レポートでは、そうした取組の一つである「子育て応援フードパントリー」にスポットを当て、何回かに分けてその内容をお伝えしていきたい。

自動車ディーラーから始まるひとり親支援

 21年12月某日、埼玉県内でトヨタ車を販売する「埼玉トヨペット(本社:さいたま市)」のサービスセンターに、次々と親子連れが姿を現した。社員から用意された食料を手渡され、笑顔で帰宅する。両手に抱えきれないほどのレトルト食品や米、調味料、お菓子などの生活必需品が手渡される。

食料品を受け取るひとり親家庭の親子(戸田市内の埼玉トヨペット店舗で活動する「フードパントリーみらい」提供、プライバシー保護のため一部修整)

 品物を受け取った人からは、「これで何とか今月も暮らしていけます」との言葉が聞かれる。ブースの片隅には人数分に満たない商品が並べられ、「一家族何点まで」との注意書きが出されている。母親と連れ立ってきた子どもが、「鬼滅の刃のお菓子があるね」「このタオルは便利に使えそう」と笑顔で話している。帰りには、「餃子の王将」から提供された餃子弁当が手渡された。

 その様子を見守るのは埼玉トヨペットの社員だけでない。地域住民による有志のボランティア、埼玉県立大学や筑波大附属高校の学生、初参加となる明治安田生命保険相互会社の社員グループもいた。これからも継続的に参加してきたいという。

 埼玉トヨペットでは、地域の市民団体と協力して戸田、坂戸、熊谷、深谷の4カ所で、2カ月に1度のペースで行われている。1つの拠点で支援しているのは、おおよそ30世帯前後。今、埼玉県で広がる「子育てフードパントリー」の一コマである。

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