未来を拓く貧困対策

2021年12月16日

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大山典宏 (おおやま・のりひろ)

高千穂大学人間科学部准教授

1974年生まれ。社会福祉士。日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科修了。福祉事務所や児童相談所での相談業務、生活保護利用者の自立支援事業の企画運営等の行政経験を経て、現職。著書に『隠された貧困』(扶桑社新書)『生活保護vs子どもの貧困』(PHP新書)『生活保護vsワーキングプア』(PHP新書)など。

 特例貸付の最終回となる今回は、前回「特例貸付に足りなかったもの」に引き続いて三芳町社会福祉協議会(社協)の取組を紹介していく。

 前回は、三芳町社協が訪れた相談者に提供する「あったか食事パック」の支援内容と、独自の支援が可能となった理由を説明してきた。企画者である古賀和美さん(58歳)は、あったか食事パックの商品を有名ブランドにすることにこだわっていると言う。「私も食べたことのないものばかりです」と笑う古賀さんは、ある少年とのエピソードを話してくれた。

 あったか食事パックが始まる前にも、三芳町社協では、相談者に食料支援を行っていた。独自の予算措置がある訳ではない。提供していたのは、行政や企業が災害時に備えて備蓄していた保存食である。

 災害備蓄品は賞味期限が迫ると廃棄され、新しいものに交換される。交換はある程度の時間的余裕をもつため、廃棄時にはまだ賞味期限になっていないものもある。これらを譲り受けてストックし、相談者に配るのである。

 写真はクッキーだが、ほかに乾パンや缶詰、アルファ米などもある。災害備蓄品を食料支援として手渡しているのは、三芳町社協だけでない。社協や福祉事務所といった生活困窮者の支援を行う相談機関では、今も日常的に見られる光景である。最近の災害備蓄品のなかには、日常食として食べることも想定し、味覚や食感にこだわったものも用意されている。また、食品ロスへの理解が広まることで、企業も災害備蓄品の再活用に知恵を絞る例も出てきている。この点に関しては改めて取り上げたい。

三芳町社協で相談者に提供されていた災害備蓄品。多くの自治体では、現在も同様の災害備蓄品が食料支援として手渡されている(筆者撮影)

 古賀さんは、「災害備蓄品を提供することに心苦しさを感じていたが、どうすればいいかわからなかった」と当時を振り返る。もやもやとした気持ちを抱えて仕事をするなかで、古賀さんは一人の少年と出会うことになる。

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