2021年12月24日、内閣府は子どもの貧困に関する初めての全国調査の報告書を公表した。クリスマスの夜にあわせて発表されたこの報告書は、10年後に、「あの報告書が子どもの貧困対策のターニング・ポイントだった」と評価されるかもしれない。
報告書の正式名称は、「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書」(以下、「報告書」)という。13年に子どもの貧困対策の推進に関する法律(子どもの貧困対策法)が制定されてから、都道府県や政令指定都市などを中心に、同じようなタイトルの調査報告書は数多く発表されてきた(子どもの貧困調査研究コンソーシアム「子どもの生活実態調査(子どもの貧困対策事業)実施都道府県」)。
しかし、報告書は、「政策実行を求める数字を集める」という点で、今までのものとは一線を画している。その特徴は、貧困の実態把握、制度補足率の把握、オープン・アクセスの3点が挙げられる。また、内閣府は、報告書を自治体の子どもの貧困対策の「通信簿」の雛形となることを期待している。
この動きに自治体が追随するかどうかは、現時点ではわからない。なぜなら、報告書は、国や自治体、そして私たちが目をそらし続けてきた「不都合な現実」を映し出す鏡のような存在だからである。
今回の連載では、内閣府の報告書を読み解くことで、現在の子どもの貧困対策に求められているもの、突破口を切り開く鍵を考えてみたい。
「食料買えない」経験が4割、子どもの進学にも影響
報告書は、家庭の経済状態の子どもへの影響を把握するため、全国の中学2年生とその保護者5000組を対象に、20年2月から3月にかけて郵送で調査したものである。半数を超える2715組から回答を得ている。
まずは、報道機関の反応を見ていこう。12月28日現在で、NHK、朝日新聞、共同通信などが報道している。各社が言及しているのは、貧困層やひとり親世帯の生活苦の現状と、特に大学進学への影響である。
現在の暮らしの状況について「苦しい」または「大変苦しい」と回答した割合は、全体では25.3%なのに対し、貧困層では57.1%、ひとり親世帯では51.8%となっている。また、「食料が買えなかった経験」は全体が11.3%に対して、貧困層では37.7%、ひとり親世帯では30.3%となる。「大学またはそれ以上に進学したいと思う子どもの割合」は、全体が49.7%なのに対し、ひとり親世帯が34.4%、貧困層28.0%となっている。