2022年12月3日(土)

未来を拓く貧困対策

2021年12月31日

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大山典宏 (おおやま・のりひろ)

高千穂大学人間科学部教授

1974年生まれ。社会福祉士。日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科修了。福祉事務所や児童相談所での相談業務、生活保護利用者の自立支援事業の企画運営等の行政経験を経て、現職。著書に『隠された貧困』(扶桑社新書)『生活保護vs子どもの貧困』(PHP新書)『生活保護vsワーキングプア』(PHP新書)など。

 NHKでは、野田聖子少子化担当大臣の「子どもの貧困対策の重要性を痛感している。現状を十分把握して必要な施策を進めたい」とのコメントを紹介している(NHK、21年12月24日)。

 12月28日には、岸田文雄首相や野田大臣の出席のもと、政府は新型コロナウイルス禍で深刻化する孤独・孤立対策の重点計画を発表した。その伏線と読み取ることができるだろう。

 朝日新聞は、内閣府の担当者と2人の有識者のコメントを紹介している。内閣府の担当者は、「今回の全国調査のデータを参考に、各自治体の実情に応じた施策を進めてもらいたい」と述べる。

 一般社団法人ひとり親支援協会の今井智洋代表理事は、自治体間の支援格差を指摘したうえで、「今後は各自治体が内閣府が示した調査方法を基本に地域の貧困実態を調べ、データに基づく政策展開をしてほしい」と話す。日本大学の末冨芳教授は、貧困層だけでなく準貧困層も課題を抱えていることが明らかになったとしたうえで、調査のサンプル数の拡大や5年ごとの定期的な実施といった改善点を指摘する(朝日新聞デジタル、21年12月24日)。

 内閣府では、今回の調査を雛形として、同じ質問項目による調査を都道府県・市町村が継続的に行っていくことを期待していることがわかる。統一した指標に基づいて調査が行われることになれば、それが自治体の子どもの貧困対策の「通信簿」となる。

 これに対して、共同通信の配信記事では、「頼れる人少なく公的支援使えず」という中見出しを立てて、公的な支援制度の存在を知らない、手続がわからないため利用できずにいる世帯が存在することを紹介している(静岡新聞、21年12月25日)。

 筆者の問題意識にも重なる部分であり、報告書の〝核〟となりうる部分である。この点について、詳しくみていこう。

公的支援制度が使われていない

 報告書では、「支援の利用状況や効果等」という項目を立てて、支援制度の利用状況と、利用していない場合にはその理由を聞いている。全体、準貧困層、貧困層、ひとり親世帯と細かい分類があるが、ここでは貧困層のものをみていこう。

 なお、前提として、貧困層の収入基準の上限と生活保護基準はおおむね均衡している。つまり、貧困層は、収入基準だけでいえば生活保護を利用できる可能性のある人たちである――。このことを念頭に置きながら、データを読み取って欲しい。

 まず、貧困層の支援制度の利用状況をみていこう(図1)。就学援助が58.6%や児童扶養手当が46.2%と5割前後の利用になっている。これに対し、生活保護は6.0%の利用に留まっている。以前利用したことがある2.7%を含めても、1割に満たない。生活困窮者の自立支援相談窓口の利用は1.0%。母子家庭・自立支援センターは1.4%であり、相談機関としてほとんど機能していないことがわかる。

 

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