2024年7月21日(日)

未来を拓く貧困対策

2022年2月24日

立ちはだかる「物流」の壁

 フードパントリー活動を戦争に例えるのは不穏当だが、わかりやすさを優先して、ここはご容赦いただきたい。前回もお伝えしたひとり親家庭に食品を手渡す場面は、いわば最前線での戦闘行動である。物語のクライマックスにあたる部分であり、多くの人がイメージするフードパントリー活動の一場面でもある。しかし、戦争が最前線だけで完結することがないように、フードパントリーもまた物資の補給線をどう確保するかという課題を抱える。

 さまざまな事情で商品として扱うことができない食料品は日々生み出されている。しかし、それを必要な人に届けるには、それをどう集め、管理し、分配するかという問題が生じる。

 10人、20人という単位であれば善意のボランティアで対応することができる。100人くらいなら頑張れば何とかなるかもしれない。しかし、数千人規模の単位となると、個々人の努力ではどうにもならない。高い専門性をもった専門家集団が必要になってくる。

物流、倉庫、ロジスティックの専門家が支援に参入

 フードパントリー活動の特筆すべき点として、物流や倉庫などの専門会社が活動に協力していることが挙げられる。その一つが、東日本を中心に運送事業を展開する「首都圏物流グループ(本社:東京都板橋区)」である。22年2月17日時点で、首都圏物流はフードパントリー23団体におおむね2カ月に1度定期配送をしており、1457世帯の生活を支えている。

 首都圏物流だけではない。運送では「青翔運輸(本社:埼玉県杉戸町)」、「高脇基礎工事(本社:同北本市)」、中間拠点や倉庫などの食料保管では「関東食糧(本社:同桶川市)」や「JAふかや(本社:同深谷市)」などがそれぞれの強みを生かしたノウハウや資源を提供している。また、冠婚・葬祭・互助会サービスを展開する「アルファクラブ武蔵野(本社:さいたま市)」では、配送に加えて寄贈食品の荷受けも担っている。

 大型トラックによる輸送に関わる費用、人件費や燃料費、倉庫の維持管理にかかる費用などはすべて各社がそれぞれ負担しており、助成金なども受け取っていない。一見すると、何のメリットもないようにみえる。

 物流業界自体の経営環境は厳しい。現場を担うドライバーの高齢化や人材確保の困難、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に伴う業態変化への対応、厳しい価格競争、時間外労働の規制が始まる「2024年問題」、コロナ禍における物流量の減少……。門外漢の筆者でも課題をいくつも挙げることができる。

 逆風下の業界で、なぜ生活困窮者の支援に踏み出すのか。首都圏物流グループ代表の駒形友章さん(50歳)は、「従業員のロイヤルティ、使命感を高めるため」と語る。

「ありがとう」とは言われない仕事

 駒形さんは二代目社長。両親の経営した会社を引き継ぐ形で代表に就いた。以前は誰もが知る大手広告代理店で仕事をしていたという。

 有名企業の広報戦略を提案し、売り上げが上がれば評価される。やりがいのある仕事だった。他方、運送業は、利益率は低く、リスクも高い。拘束時間も長い。荷物は時間に届くのが当たり前で、商品を傷つけたり、時間に遅れたりすればクレームが入る。客から感謝の言葉をもらうことも少なく、表彰にも無縁の世界だという。

 だからこそ、と駒形さんは続ける。「人間、感謝されてうれしくない人はいない。機会があれば、人の役に立ちたいという気持ちは誰にでもある。ほめられる機会をつくっていくのは、経営者の仕事」。


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