農林水産省の広報誌「aff(あふ)8月号」(“もっと食べたくなる”トマトの特集記事)」に載った記事の一部が消費者の誤認を理由に修正された。実は、この修正劇は農水省の〝二面性〟を垣間見る貴重な一場面であった。さらに言えば、この二面性は、農水省が推進する「みどりの食料システム戦略」が将来において、恐ろしい結末を生む予兆でもある。恐るべき結末とは何なのか。
「無添加だから安全安心」に農水省はツイッターで援護
「aff」(あふ)は、農水省が編集・発行(CCCメディアハウスが編集協力)するWebマガジン広報誌。「aff」はagriculture(農業)、forestry(林業)、fisheries(水産業)の頭文字だ。8月号は全国各地のユニークなトマト製品の特集記事だ。
この問題については、すでに科学ジャーナリストの松永和紀さんの「農水省広報誌がケチャップで批判された理由」や朝日新聞、そして「Wellness Daily News」が報じている。詳しくはそれらの記事を読んでほしいが、ここでは別の角度から、この問題の核心を論じたい。
問題のポイントが理解できるよう手短に解説する。「aff」に掲載された北海道や愛媛県など4県のトマトジュースやケチャップ4品目に関して、「香辛料を控え、保存料や着色料などの食品添加物を一切使わない安心安全なケチャップ」や「塩や保存料の添加は一切ありません」(トマトジュース)といった表示があった。
この表示を援護する形で農水省は公式ツイッターアカウントで「添加物を使用しない、子供でも安心して食べられるケチャップを作りたい!という想いで作られたそうです」と投稿していた。
普通に読めば、素通りしてしまいそうな表示だが、そもそもトマトジュースは食品表示法によって保存料が使えないし、同様にトマトケチャップも保存料や着色料は使えない。こうした違法表示は消費者に「添加物は危険」との誤認を与え、さらに「他の同様の製品よりも優れたものと思わせる優良誤認」を生じさせるおそれがある。
どう見ても、今年3月30日に公表された消費者庁の「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」の内容にも反し、食品表示法や景品表示法違反の疑いがある。
この問題に気づいた「食の信頼向上をめざす会」(会長・唐木英明東京大学名誉教授)は8月11日、「4品目の記述は消費者の誤認を招く」と指摘した。消費者団体「食のコミュニケーション円卓会議」(市川まりこ代表)も意見書を農水省に出した。
これらの指摘に対して、農水省は即座に反応。翌12日には無添加に関する記述は削除され、表現も修正された。現在、Webサイトの8月号を見ると、4品目に関して「本誌記事の一部について、2022年8月12日に修正」と記されている。
これだと、どこがどう訂正されたかが分からない。そういう問題点は残るものの、筆者が強調したいのは、そこではなく、なぜ、農水省がこういう無添加トマト製品を特集に取り上げたか、である。