また、牛乳のように賞味期限に開きのある食品では、棚の奥に消費期限の長いもの、短い製品が手前に並んでいることがある。このような食品に対して消費者庁は、各自の購入後の消費の速度(家族が多いと早く消費するなど)を考えて、使いきれるならば手前の食品から購入する「手前どり」を奨励している。
この手前どりによる食品ロスへの効果が京都市で実証されている。アンケート結果から、使いきれないための食品ロスを防止するために奥から買う人もいたが、手前どりを実施した人の食品ロスが減ったことがわかっている。手前どりの意識が、行動変容を興しているようだ。
野菜の皮を生かしてどれだけロスを減らせるか
野菜の皮を厚く向きすぎる過剰除去(14%)も、消費者の努力で改善できそうにみえる。過剰除去削減のアイディアとして、切り落とすのはニンジンやタマネギのへたの中心だけにする、大根の皮はキンピラにする、ブロッコリーの軸はゆでてサラダにするなど事例はよく紹介されている。一方、キャベツの劣化した切断面を薄く切り落とすなど、共感できる過剰除去もあり、過剰除去を一律にゼロにするのは難しい(「家庭における調理時の食品ロス「過剰除去」の実態と発生要因」)。
筆者はへたの切り方や大根の皮の活用で、どのくらい廃棄率を減らせるか、重さを測って実験してみた。
ニンジンのへたの中心だけを捨てるようにすると4.6%の廃棄率を1.5%まで下げることができた。ダイコンは真ん中部分だけをカットしたもので、向いた皮をキンピラなどで活用すると17%を捨てないですむ。タマネギの上部を水平にカットせず、中心だけを捨てると、廃棄率3.3%から1.1%にすることができた。
ダイコンの皮、かぶやダイコンの葉の利用はやり方を知っていれば誰でもできそうだが、時間的、精神的に余裕がないと、自宅で調理する機会も減っている昨今、全員ができるとは限らない。過剰除去(14%)は消費者の努力でどこまで減らせるのだろう。過剰除去を減らす努力に異を唱えるつもりはないが、先述の家庭系食品ロス削減の方法に比べると、過剰除去を減らして食品ロスを目に見えるほどに減らそうとするのはハードルは高そうだ。
消費者の努力だけでなく、もう少しシステマティックな方法はないだろうか。
加工食品「3分の1ルール」の緩和を
2021年10月29日農水省「食品ロス削減や食品リサイクルの取組事業者と取組内容を公表」を発表している。食品メーカーや小売りでの食品ロスを減らし、そこに消費者も関われる取り組みで、それを最後に紹介したい。
加工食品には「3分の1ルール」と呼ばれる商慣習がある。製造日から賞味期限までを6カ月とした場合、メーカーや卸が小売店へ納品できるのは最初の3分の1(2カ月)までで、それを過ぎると納品できないというルールだ。
流通経済研究所の石川友博・主任研究員によると、3分の1ルールの納品期限を過ぎてメーカーに返品される金額は1139億円という(2010年)。もし、無事に出荷されても4カ月が経過すると販売期限を迎え、安売りか廃棄となる。米国の2分の1、英国の4分の3に比べ、日本の3分の1ルールは確かに厳しいのが現実だ。