筆者は、Wedge ONLINE 「【日本物流における内航海運の位置づけ】2024年問題の解決へどれだけ寄与するか、データで徹底検証」において、フェリー輸送・RORO船輸送(貨物をトレーラーごと運ぶ船で、貨物を載せたトレーラーが自走して積み込まれる)・コンテナ船輸送(国際規格の海上コンテナを専門に運ぶ船)へのモーダルシフトを短期的に実現することは困難だが、日本の物流が「2024年問題」から脱却し、生まれ変わるためには必要不可欠な戦略であり、その推進には熟慮熟考の上で点滴岩を穿つが如き不断の努力が必要であると指摘した。
今回は、そのような中長期的な観点に立って、日本の内航海運事業が進むべき方向性について述べて行きたい。
「2024年問題」だけではない日本のトラック運送事業が超えるべき課題
本題に入る前に、なぜ、筆者がここまでモーダルシフトを重視するかについて、お話しして置こうと思う。本題をご理解頂くために、不可欠であるからである。
実は、日本のトラック運送事業が乗り越えなければならない本質的課題は、ドライバーの労働時間についての「2024年問題」だけではなく、運送事業をインフラとして支えている道路の整備状況も、大きな課題として立ちはだかっている。
上表は、日本を含む主要国の高速道路整備状況を示したものである。道路延長だけを見ると何も気づかないかも知れないが、日本とほぼ同規模の国土面積であるドイツや、日本の約4分の1の韓国に注目すると、面積当たりの道路延長はドイツが日本の1.5倍以上、韓国に至っては2倍以上であることが分かる。さらに、人口当たりの道路延長や車両保有台数当たりの道路延長も日本の数値が非常に低い。
次に、高速道路の車線数別延長構成比に注目すると、さらに厳しい実態が一目瞭然となる。
各国の6車線以上の高速道路の構成比が25%前後であるのに対し、日本はわずか6%。各国の2車線の高速道路の構成比がほぼ0%に近いのに対して、日本は40%近いという、驚くべき状況なのである。日本の高速道路のキャパシティーが先進国としては決して十分ではないと考えるのは、筆者だけであろうか。