時間外労働の上限時間が制限される2024年4月から、「物流の2024年問題」へ直面することになる。対処するのは運送事業者だけではない。国土交通省の出先機関も奮闘する。「Wedge」2024年2月号に掲載されている「霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なこと」記事の内容を一部、限定公開いたします。
「Gメン」と聞いて読者諸氏がとっさに思い浮かべるのは、万引き犯を物陰から尾行する私服警備員の姿だろうか。
実は昨年、国家公務員にも〝Gメン〟が誕生した。国土交通省が創設した「トラックGメン」だ。
彼らは、いわゆる物流の「2024年問題」が間近に迫る中、過積載運行の要求など、荷主や元請事業者による不正な取引を監視する役割を担う。
各担当は一人あたり数千から数万単位の事業者に1件ずつ電話をかけ、長時間の荷待ちや運賃・料金の不当な据え置きがないかなど、ヒアリングを行う。ドライバーからは「俺たちの味方になってくれてありがとう」と、電話越しに感謝されることもあるという。
そんな彼らが働くのは、国交省の本省ではない。「出先機関」である。
出先機関とは、中央官庁が所掌する事務の一部を代行するため、地方に設置される補助機関のことだ。トラックGメンは国交省の出先機関である「運輸局」に所属している。その他にも例えば厚生労働省であれば、北海道、近畿、九州など8つの地域に「地方厚生(支)局」を構えている。そこで働く職員の多くは筆記試験や面接試験を経て採用された一般職の国家公務員だ。
トラックGメンに代表されるように、中央官庁が立てた計画や基準などを、手となり足となり執行するのは出先機関の職員である。全国で働く一般職の国家公務員のうち、8割超を占める彼らの存在がなければ、中央官庁が描く社会は実現しないといっても過言ではない。
しかし、出先機関の職員は中央省庁の官僚よりもスポットライトが当たることは少ない。各地で働く彼らはどんな思いで、どのような仕事をしているのか。最前線の現場を訪ねた。