筆者は、Wedge2024年4月号のWEDGE REPORT「『2024年問題』いよいよ本格化へ」及び3月28日のWedgeONLINE「<生活直撃の危機>日本の物流クラッシュ寸前!『2024年問題』本格化で一体何が起こるのか?」で、「物流の2024年問題」(以下、「2024年問題」)の行方について警鐘を鳴らすと同時に、その特効薬のひとつと考えられている鉄道輸送や内航海運へのモーダルシフトの即効性に疑問を呈し、中長期的に対応していく必要があると指摘した。
しかしながら昨今、「2024年問題」対策として鉄道輸送や内航海運へのモーダルシフトを加速させる荷主企業や物流企業の情報がメディアを賑わせており、読者の中にも選択肢として真剣に検討している企業の方も多いと思われる。
そこで今回は、鉄道輸送と内航海運の実態とモーダルシフトに向かうに当たって、把握すべき現実、課題、めざすべき方向性について、述べてみることとする。
1960年代から10分の1未満に減少した鉄道貨物取扱駅
読者の中には、汐留貨物駅と聞くと懐かしい思いを抱かれる50代以上の方も多いのではないだろうか。現在“汐留シオサイト(SIO-SITE)”と呼ばれている新橋駅東側の汐留地区に建設された巨大複合都市は、1914年に完成した東京駅が東海道本線の起点となって以降、それまでの新橋駅が汐留駅と改称されるとともに貨物専用駅に変更され、以降70年以上にわたって鉄道貨物ターミナルとして機能していたのである。
その間、64年の東京オリンピック・パラリンピックを契機とした日本の高速道路網の拡充に伴い、モータリゼーションが急速に発展し、トラックが貨物輸送の主要モードとなった。70年代に入ると鉄道輸送は大きくシェアを落とし、その後およそ30年間にわたって分担率を落とし続けることになった。
汐留貨物駅のような多くの貨物取扱駅が廃止、或いは統合され、下図の通り60年には3600カ所以上あった国鉄(現JR貨物)の貨物取扱駅は、65年までのわずか5年間で700カ所以上減少し、その約40年後の2006年には10分の1未満の270カ所にまで激減してしまったのである。
この間に廃止・統合された貨物駅の中には、日本最大の貨物駅と言われながら、84年2月1日のダイヤ改正により操車場機能とコンテナ貨物の取扱が廃止され、86年には貨物駅としても廃止となり、現在では旅客駅のさいたま新都心駅として生まれ変わった大宮貨物駅なども含まれる。