自民党の長老、二階俊博氏が次回総選挙への不出馬を表明した。裏金問題での責任を取ったという。
二階氏は引退会見で謝罪の言葉は口にしたものの、肝心の疑惑の内容については、説明を避けた。国民の不信は何ら払拭されないままだ。裏金問題の帰趨への影響は不可避だが、岸田文雄首相はこの混乱の中、衆院の解散・総選挙の可能性を探っている。
スキャンダルと強引で内向きの政局運営――。日本政治の劣化は、国際社会における日本の一層の地盤沈下をもたらすだろう。
あまりに見苦しかった不出馬会見
「自民党内でもっとも政治技術をもった人」(故安倍晋三元首相)といわれた二階氏は昭和、平成、令和の3代にわたって党内で要職を歴任。幅広い人脈、時に権謀を用いる老獪さで時の政権に影響力を与えてきた。評価は功罪相半ばするが、その退場はやはり時の移りを感じさせ、永田町では感慨深く受け止める向きも少なくない。
二階氏は不出馬を表明した記者会見で、「政治不信を招く要因となったことにあらためてお詫びする」と謝罪した。しかし、裏金問題の経緯、自らの秘書が政治資金規正法違反で有罪が確定したことについての詳しい説明は一切避け、記者からの質問の多くを同席した側近議員が答えた。
高齢が引退決断の理由かと聞いた記者に対して「年齢に制限があるのか?お前もその年が来るんだよ」と凄みをきかせ、「ばかやろう」と」吐き捨てた。
テレビカメラの前での見苦しい言動だけに、これが自民党の元幹事長かとあっけにとられた人も少なくなかったろう。 「自民党が再び国民の期待に応えられるよう再起することを願う」という言葉が何とうつろに響いたことか。
疑惑の中心人物のひとりである二階氏の不出馬表明は、国民の信頼回復においてはほとんど意味を持たないだろう。