中国がデフレに陥ったのではないか。
昨年来、ささやかれている懸念だ。確かに2023年通年の消費者物価指数(CPI)は0.2%にまで落ち込んだ。
気づけば、万年デフレと揶揄されてきた日本と逆転している。日本が「失われた30年」からようやく抜け出そうとしている今、代わりに中国が長い長い停滞に入りつつあるのではないか……。中国では不安が広がっている。
中国のデフレ傾向はマクロ経済の視点から需要不足のあらわれとして説明されることが多いが、企業や消費者の視点から見ると過去10年以上にわたって続いてきた中国の発展モデルの“到達点”である。2010年代の中国の飛躍を支えてきた、この発展モデルは中国に何をもたらそうとしているのか。
“中国流”に巻き込まれたスタバ
米スターバックスの23年10~12月期決算が中国で話題となった。中国市場での平均客単価が前年同期比9%減と大きく減少したためだ。4~6月期は1%、7~9月期が3%のマイナスで、下げ幅は次第に拡大しつつある。
その要因となったのが強力なライバルの登場にある。ラッキンコーヒーやコッティ・コーヒー、ラッキーカップなどの中国ローカルの新興コーヒーチェーンが急拡大している。
新興チェーンの売りは安さ。定価でもスターバックスの半額以下だ。その上、値引きキャンペーンが頻繁に実施されているほか、割引きクーポンもどっさり配られている。
また、中国社会にあった話題作りのうまさでもローカル企業に軍配があがる。好例が中国トップ酒造メーカーのマオタイ酒とラッキンコーヒーがコラボした酒入りコーヒーだ。売り切れ続出の社会現象的なバズとなった。
スタバも今年2月に豚の角煮風味のラテという話題作り優先のゲテモノ飲料を投入した。 “中国流”の戦いに巻き込まれたわけだ。もっともスタバの看板があるだけに、ブランドイメージを壊すようなキャンペーンは難しく、角煮ラテという冒険をしたとはいえ、一歩劣っている印象だ。
価格面でもスタバは“中国流”に巻き込まれつつある。新製品の価格を抑え、デリバリーでの注文だけという方式でこっそり割引きクーポンを出すなど対策を講じるようになった。これが先ほどの客単価にはねかえってきたわけだ。