2024年4月30日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月8日

 フィナンシャル・タイムズ紙の3月17日付け記事‘Brazil launches China anti-dumping probes after imports soar’が、ブラジルが中国の反ダンピング調査を開始したことを報じている。要旨は次の通り。

(Racide/gettyimages)

 ブラジル産業省は、産業界からの要請に基づき、中国による工業製品ダンピング疑惑について、過去半年間に金属薄板、鉄鋼材、化学製品、タイヤなどに関して、少なくとも10余りの調査を開始した。

 今般のブラジルの措置は、世界第2位の経済大国、中国が不動産セクターの減速と内需低迷の中で生産能力過剰に苦しんでおり、世界が中国からの輸出の洪水に備えている時にとられた措置である。経済活性化のため、中国は先進的な製造業、特に太陽光発電、電気自動車、バッテリーに投資している。

 中国の輸出は今年1~2月の間に7.1%増加し、輸入の伸びを大きく上回った。中国の輸出価格下落が長引けば、中国と主要経済大国との貿易摩擦が高まる可能性がある。

 中国税関のデータによれば、中国の対ブラジル輸出・輸入ともに、今年最初の2ヵ月間で3分の1以上増加した。

 北京との関係を強化しつつ、国内産業を保護、発展させようとしている左派のルーラ大統領にとって、貿易摩擦はジレンマをもたらしている。昨年、大統領に返り咲いたルーラは、産業政策を経済戦略の中心に据えている。ブラジル政府としては、最大の貿易相手国であり、大豆や鉄鉱石などの商品を大量に購入している北京との対立を避けたいようでもある。


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