プーチンによる一層の強権発動が見込まれるロシアはこれからどうなっていくのか。「ロシアの弾は切れない」。その理由とは? データをもとに2024年のロシア経済を予測する。2024年1月5日に掲載した『「軍事ケインズ主義」進めるプーチン 2024年のロシア経済』を再掲する。
ロシアのRIAノーヴォスチ通信は暮れに、2023年のロシア経済十大ニュースを発表した。それを整理すると、以下のとおりとなる。
1. 経済の崩壊ではなく成長が生じた
2. 記録的な失業率の低さ(それと裏表の人手不足)
3. 物価沈静化に奔走も年末には卵が高騰
4. ガソリン不足
5. 為替安定のため対策に追われる
6. 過去最大の財政歳出
7. 冶金・化学の大企業中心に超過利潤税を課税
8. 富豪YouTuberの課税逃れに対する取締強化
9. 石油輸出国機構(OPEC)+の枠組みでの石油減産続く
10. 対露制裁拡大、ロシアは友好国との連携強化
トップの項目にあるとおり、無謀なウクライナ侵攻を続け、国際的な制裁包囲網を敷かれながら、23年もロシア経済が崩壊することはなかった。23年に国内総生産(GDP)が3%前後のプラス成長を記録することは、確実視されている。プーチン大統領に至っては3.5%成長という見通しまで示している。
「プーチンの言うことは信用できない」という読者のために、コンセンサス予測というものを紹介しておこう。これは、ロシアの「発展センター」というシンクタンクが、内外の専門家を対象に主要経済指標の見通しに関するアンケート調査を実施し、それを平均して定期的に発表しているものなので、一定の信憑性がある。
表に見るのは、最新の11月2~14日の調査結果であり、これによれば23年の成長率は2.6%となっている。24年以降も、1%台半ばと決して高くはないものの、一応はプラスの成長が続くという見通しである。
ロシア経済に関する最近の論評を眺めていると、しばしば目にするのが、「経済の過熱」という言葉である。むろん、そこにはさまざまなひずみが潜んでいるにしても、今のロシア経済が「不況」から程遠いことだけは、認識しておくべきだろう。