2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月8日

 ブラジルの鉄鋼メーカーは、輸入した鉄鋼製品に対して、9.6%から25%の関税をかけるよう政府に要求している。中国からの鉄鋼と鉄の輸入は、2014年の16億ドルから昨年は27億ドルに増加した。中南米諸国は鉄鋼生産の主原料である鉄鉱石の世界有数の輸出国であるが、急増する安価な鉄鋼輸入は、ブラジル政府にとって頭の痛い問題だ。

 また化学品とタイヤも問題になっており、産業省はここ数カ月、別個に調査を開始している。公式データによると、中国からの無水フタル酸の輸入量は、18年7月から23年6月までの間に数量ベースで2000%以上増加した。同期間、タイヤの輸入量は2300万本から4700万本へと100%以上増加し、その約80%は中国からであった。

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G20議長国ブラジルの頭痛の種

 「世界の工場」として世界第二の経済大国となった「中国」は、この20年近くの間に、世界の多くの国にとって最大の貿易相手国になった。この記事は、「コロナ以降、中国経済の不調が深刻化し、生産設備が過剰となる中、安値攻勢で製品輸出を増加させ、他国経済に悪影響を与えるようになっている。そして、各国は対抗措置をとるために調査を開始した」と報じている。中国経済の悪化が世界に与える影響を把握する上で重要な報道である。

 09年以降、中国は輸出入ともに、ブラジルにとって最大の貿易相手国となった。2位は米国である。23年、ブラジルから中国への輸出総額は、大豆、食肉、石油、鉄鉱石など1043億ドル(史上最高額)であった。

 ブラジルの中国からの輸入総額は532億ドル(機械類・電気機器、紡織用繊維、化学工業品等)であり、ブラジルの対中貿易黒字額は500億ドルを超えている。中国が大豆など食料や天然資源の備蓄を増加させているのは、気候変動や有事に備えているからとも言われている。

 記事では、ブラジルによる中国製品アンチ・ダンピング調査の開始に触れているが、中国は逆に24年2月、19年からブラジル産鶏肉に適用していたアンチ・ダンピング措置の撤廃を公表した。ブラジル国内を「分断」しようとする「中国らしい措置」である。

 今年、ブラジルは主要20カ国・地域(G20)議長国であり、また、中国との国交樹立50周年を迎える。来年は有力新興5カ国で構成するBRICS首脳会議と第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)がブラジルで開催予定である。昨年、中国との二国間貿易において米ドル排除を決定する等、中国との一層の関係強化を期待しているルーラ大統領にとって、中国製品のダンピングは間違いなく「頭痛の種」である。


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