投資家にとっては必ずしもマイナスではない。最後のババさえつかまなければ、急成長する企業に乗っかって一儲けすることができる。
そして、中国という国という俯瞰的視点から見ると、多産多死の中からごく一部とはいえ本当の技術力やブランド力を兼ね備えた優良企業が生まれてくるという点でポジティブな側面もある。太陽光パネルやバッテリー、電気自動車(EV)など、新興産業分野では世界のトップシェアに君臨する企業も登場している。中国政府はこのジェットコースターのような新興企業の多産多死を歓迎、推進する立場をとるようになっている。
赤字上等の成長戦略をとるためには、お金の出し手が必要となる。ベンチャーキャピタルがこの役割を担ってきた。爆発的な成長を遂げれば上場や事業売却で出資金のもとは取れるというソロバン勘定である。
ところがベンチャーマネーだけならばまだしも、近年では政府系ファンドがベンチャーキャピタルに出資することで、赤字上等戦略を支えるようになってきた。今や政府系ファンドの資金規模は13兆元(約270兆円)に達しているとされる。
世界各地を“荒らし”、撤退する懸念
この膨大なマネーによって突き動かされるジェットコースターのような浮き沈みの新興企業群は今や中国国内のみならず、全世界に影響をもたらすようになっている。赤字上等戦略で生み出された、高コスパのアパレル、バッテリー、EVなどが全世界で売れまくっている。
消費者の視点からすると、ありがたい話ではあるが、企業や労働者の視点からすると、このせわしなく“しんどい”経済に否応なくまきこまれるのは勘弁してほしいという気持ちになるも事実だ。地方に出店したショッピングモールが地元のお店を軒並み倒産させてから撤退するように、中国の新興企業が世界各地のローカル企業を潰滅させてから潰れるというのも困る。
“中国のデフレ”とともに、世界に波及する“中国発のデフレ”を懸念する声が高まっているのだ。