さすがにスタバにとってさすがに大々的な値引きは御法度だ。ブランド戦略、価格戦略を崩壊させかねない。
一方、中国の新興コーヒーチェーンはコーヒーで儲けることが目的ではない。「客を集め、その勢いを見てフランチャイズ加盟希望者を集め、規模を拡大する」というステージにあるので、赤字上等の大胆な値引きが可能だ。
消費者から見れば、赤字覚悟の価格戦略を行っている新興コーヒーチェーンの商品はお値段以上の価値がある。つまるコストパフォーマンスが良いとみることができる。高い値段を支払ってもスタバが提供する味、雰囲気、ブランド力などの“価値”を手に入れたいという客と、お値段以上のお得さがある新興コーヒーチェーンで良いという客とに分かれるわけだが、後者の数が増えているのが今の中国だ。
高級ブランドの「平替」の行き詰まり
こうした動きは、中国では「消費降級」(消費ダウングレード)、「平替」(高級品を通常価格の品物に代替する)というビジネス用語で理解され、コーヒー業界に限らずさまざまな業界の指針となっている。たとえば日経自動車メーカーも、中国メーカーの激烈な値引きについていけず後手に回っている……というスタバと同じ苦境に陥っている。
別のパターンもある。小売分野では消費期限切れ間近の商品を値引きして販売するチェーン店が人気だ。昨年、大手値引き販売チェーンのHot Maxx(好特売)を訪問した。酒やお菓子など同じ種類の商品を大量に並べる店舗デザインは日本のバッタ屋と似ている。
訳あり商品を大量に仕入れて安く販売しているのだと視覚から訴えてきているのだが、実際にモノを見てみると一般のスーパーで販売されている商品と消費期限はさほど変わらない。実は値引き販売チェーンが登場した初期は実際に訳あり商品、消費期限切れ間近の商品を集めていたようだが、規模が拡大していくと仕入れが追いつかなくなる。結局、普通に仕入れて販売する、バッタ屋を装った、ちょっと安い普通のお店になっている。
商品を製造しているメーカーからすると、価格下落やブランド力低下につながりかねないが、急拡大する値引き販売チェーンを逃すわけにもいかず、悩ましい。