主要国の中央銀行が政策変更をする時には大きなニュースになる。世界経済に与える影響が大きく、中でも米国の中央銀行に相当する連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、そして日本銀行の金融政策に対する注目度は高い。
その日銀が3月19日の金融政策決定会合で17年ぶりの利上げを含む金融政策の大幅変更に踏み切った。黒田東彦・前総裁時代の中心政策だったマイナス金利政策と長短金利操作を行うイールドカーブ・コントロール(YCC)を廃止した。
金融機関にとっては「織り込み済み」
メディアは歴史的な政策変更として大きく扱った一方、金融機関サイドは比較的冷静だった。決定会合が開かれる前から今回の政策変更は既に「織り込み済み」だったからである。
背景には総裁や副総裁など幹部の対外的な講演などで政策変更の可能性を少しずつ市場に浸透させ、巧みに地ならしをした日銀の情報戦略がある。この結果、政策変更は3月か4月かのいずれかには実施されるとの見方が固まり、当初、関係者の多くはどちらかといえば4月ではないか、という見方に傾いていた。
そうした市場コンセンサスが作られつつあった中で、日銀は3月会合での政策変更を決断する。その理由についてあるメガバンクの幹部はこう解説する。
「春闘で大企業の賃上げ動向が高水準となることが示され、新年度予算も年度内成立のメドが立った。加えて、自民党の派閥による政治資金問題で、政治サイドが日銀の金融政策に口出しする余裕がない中で、4月に入ると衆院補選などの政治イベントが待ち受ける。さらに米国の金融政策の動向も踏まえると3月がベストと判断したのだろう」