トラックドライバーの時間外労働時間が2024年4月から大きく制限される。これに伴い、トラック運送事業者を中心とする物流事業者のみならず、農林水産業・製造業・卸売業・小売業などの荷主企業にも大きな影響が及ぶことが予想されている。いわゆる「物流の2024年問題」(以下、「2024年問題」)である。
22年9月より、経済産業省・国土交通省・農林水産省が事務局を務める「持続可能な物流の実現に向けた検討会」が開催され、業界や官庁の垣根を越えてさまざまな検討が重ねられた。23年10月には「物流革新緊急パッケージ」を公表、鉄道(コンテナ貨物)と内航船(フェリー・RORO船〈貨物をトレーラーシャーシ(貨物を載せる土台部分)ごと運ぶ船で、貨物が自走して積み込まれる〉など)の輸送量を今後10年程度で倍増し、トラック輸送からのモーダルシフト推進を支援するとした。また、トラック運送事業者の正当な運賃・料金収受のため貨物自動車運送事業法に基づく標準的な運賃に物価動向を反映すること等も盛り込まれた。
そして、今年2月には「物流総合効率化法(物効法)」の改正案である「流通業務総合効率化法」が閣議決定された。これにより一定規模以上の発荷主・着荷主・物流事業者に対するドライバーの荷待ち・荷役時間の削減等に向けた計画策定等、罰金を伴う義務付けや発着荷主と運送事業者に対する物流効率化のために取り組むべき措置についての勧告・命令を伴う努力義務化、特定荷主に対する「物流統括管理者」選任の義務化が実施されることとなった。
このように見てくると、「2024年問題」に対する準備は、政府主導のもと着々と進んでいるように見受けられる。だが、そうは問屋が卸さないという現実がある。
中小企業の半数近くが
「何をすればいいのかわからない」
日本商工会議所は、23年7月に全国各地域の中小企業を対象に「2024年問題」への対応に関する調査を行い、2000社近くの有効回答を取りまとめた。その結果、中小物流事業者の65%近くが「2024年問題」への取り組みを開始しており、30%近くが今後取り組む予定であると回答している。一方、中小の荷主企業の多くが「認識しているが、何をすればいいのかわからない」、「認識していない」、「取り組む必要がない」と回答しているのだ。
特に小売業等を中心とする着荷主については、「取り組みを開始」、「取り組む予定」を合わせても16%にも満たない。製造業を中心とする発荷主、卸売業を中心とする発荷主でもあり着荷主でもある荷主企業においても、半分近くが「認識しているが、何をすればいいのかわからない」と回答しており、物流事業者と荷主企業の認識には大きな乖離があるようだ。
同調査では、荷主企業の生の声として、「物流効率化に向け、取引先の近隣地域への切り替えや、発注システム導入等を実施。今後、近隣の同業者と共に、パレット〈輸送、荷役、保管のために貨物を載せる木製やプラスチック製の荷役台。サイドに差込口があり貨物を載せたままフォークリフトで持ち上げることができる〉単位の共同仕入れ等に取組む予定」と積極的なコメントが見られる一方、「年々、得意先が在庫を縮小する傾向にあり、製品を複数回に分けて納品することが増加。物流効率化が必要だが、何から着手すればいいか分からない状況」という苦しいコメントもあり、状況の複雑さを物語っている。