2024年12月8日(日)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2023年8月24日

 前回『物流「2024年問題」で宅配便を問題視するメディアの誤解』は、物流の「2024年問題」の本質が宅配便への影響を最小化することではなく、日本の総貨物量の90%以上を占める宅配便以外の貸し切りトラック輸送を中心とする工場間輸送、工場~倉庫・物流センター間輸送等のBtoB貨物輸送の発着両端で発生しているドライバーの手待ち・手荷役や長時間運転を含む長時間労働の解消にあることを指摘した。

(bee32/gettyimages)

 そこで今回は、物流の「2024年問題」を念頭に置いた上で、物流の中核である運輸業、特にトラック運送業の実態に焦点を当て、前回とは異なるグローバルな視点からこの問題の核心にアプローチしてみようと思う。

非常に低い日本の運輸業の労働生産性

 皆さんの中には、毎年年末に日本生産性本部が発表する「労働生産性の国際比較」というレポートをご存じの方が多いのではなかろうか。2022年12月19日に発表された最新版「労働生産性の国際比較 2022」によると、21年の日本の時間当たり労働生産性は49.9 ドル(5006 円)で、経済協力開発機構(OECD) 加盟38カ国中27位と、1970年以降最も低い順位となったことから、注目された方も多いと思う。

 その際、主要先進7カ国の時間当たり労働生産性の順位の変遷を見て、日本の労働生産性が1970年以降50年以上も最下位を続けていることに気付いて、驚かれた方も少なくないのではないだろうか。

 このレポートにおける労働生産性の定義については、紙面の制約もあるのでここでは詳細には触れないが、時間当たりに生み出した付加価値(企業が新しく生み出した金額ベースの価値)を表した数値とされている。簡単に言うと、この労働生産性が高ければ高いほど、その国では金を生み出す良いビジネスが行われているということになるのだ。詳細にご興味のある方は、日本生産性本部のウェブサイトにアクセス頂きたい。

 日本生産性本部は、この定点観測としての「労働生産性の国際比較」以外にも、労働生産性に関するさまざまな調査研究を行っており、産業別の労働生産性比較に関する調査も複数回実施されている。図1のグラフは、それらの調査結果から運輸業の労働生産性を抽出して、主要先進7カ国の中で1位の米国と最下位の日本を比較したものである。

(出所)公益財団法人日本生産性本部 生産性レポートVol.2「日米産業別労働生産性水準比較」2016年12月、生産性レポートVol.6「質を調整した日米サービス産業の労働生産性水準比較」2018年1月、生産性レポートVol.7「産業別労働生産性水準の国際比較」2018年4月、生産性レポートVol.13「産業別労働生産性水準の国際比較~米国及び欧州各国との比較」2020年5月を基にNX総合研究所が作成 写真を拡大

 各年、各期間の調査により対象となっている産業は「運輸業」と呼ばれていたり、「運輸・郵便」と呼ばれていたりするが、いずれの調査結果を見ても、日本の労働生産性水準は米国の半分未満となっている。つまり、日本の運輸業は、米国のそれと比較して、同じ時間をかけても半分未満の金しか生み出さない、決して良いとは言えないビジネスだということである。


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