2024年12月14日(土)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2023年8月2日

 物流の「2024年問題」まで8カ月を切った現在、メディアなどでは宅配便にどのような影響が出るかに焦点を当てた報道が多いように見受けられる。例えば、「宅配便最大手、6月1日から一部地域の宅配便配達日を『翌日』から『翌々日』に変更」、「宅配便最大手2社、4月から宅配便の一部の値上げを実施」、「通販の荷物が届かない?物流の2024年問題とは」などだ。おそらく消費者に最も近い物流商品だからであろうが、「2024年問題」にとって最重要課題は宅配便への影響を最小化することであるかのような取り上げ方である。

(Rawf8/gettyimages)

 「2024年問題」に対応するため政府が取りまとめた「政策パッケージ」のコンテンツに関しても、多くのメディアが真っ先に飛びついたのは、「宅配ボックスの普及などで再配達率の半減を目指す」ことであった。

 そこで今回は、メディアに大きく取り上げられる宅配便とは、日本の物流、貨物輸送にとってどのような存在なのかについて、消費者目線とは些か異なる目線で捉えていきたいと思う。

日本の貨物輸送における宅配便の位置づけ

 皆さんは、「特別積合わせ(以降、『特積み』と呼ぶ)という輸送形態をご存じだろうか? 「特積み」とは、不特定多数の荷主企業の貨物を1台の車両にまとめて積載し、全国規模で輸送する輸送形態のことである。「特積み」では、集配は一定エリア内で行い、異なるエリア間の幹線輸送の発地と着地に積み卸しの物流拠点を設けて、定期的に幹線輸送を行う。

 「特積み」は、トラック1台を貸し切るほどの物量に満たない複数荷主の貨物を積み合わせて輸送するサービスであるため、一件一件の貨物の重量、容積、荷姿は実にさまざまであり、パレット(荷役台)単位の比較的大きく重い貨物もあれば、カートン(段ボールなどの箱)単位の小さく軽い貨物もある。

 宅配便は、この「特積み」の中から、1個当り重量・サイズの小さい荷物の輸送に特化した輸送サービスの総称である。自動車輸送統計上は「特積み」の貨物量に含まれているが、宅配便の統計として把握されているのは個数のみであり、重量について把握されていない。

 しかし、過去における学術調査において、短期間ではあるが宅配便貨物の重量が捉えられたことはある。その際の調査結果を取りまとめたのが、以下の表1である。

出所:小野秀昭:流通経済大学物流科学研究所教授/中田愛子:株式会社運輸・物流研究室 主任研究員「特積みトラック業界の輸送効率化対策と事業戦略についての考察」物流問題研究 = Logistics review (54) 40-50, 2010をもとにNX総合研究所が作成 写真を拡大

 2004年10月の宅配便の取り扱い重量は263万9000トン、個数は2億2421万2000個で、宅配便1個当たりの平均重量は11.8キログラム(Kg)、宅配便が「特積み」全体に占める割合は3割強であった。読者の皆さんには、この3割強という数字を良く覚えて置いて頂きたい。


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