先にも申し上げた通り、宅配便の統計として報告されているのは個数のみであり、重量は把握されていない。あくまで想像の範囲内ではあるが、企業宅配が多かったと思われる04年当時と比較してEC貨物が多くなった現時点では、宅配便1個あたりの平均重量は9Kgを切り、総貨物量に占める割合も1%を切っているのではないか。読者の皆さんの経験に照らしても、ECサイトで購入する商品の平均重量は9Kgを大きく下回っているのではなかろうか。
いずれにしても、宅配便が日本の総貨物量に占める割合は極めて限られているのである。
物流「2024年問題」の本質は
お気づきの通り、「2024年問題」にとっての最重要課題は、宅配便への影響を最小化することではないのである。もちろん、宅配便の再配達率削減のために指定配達時間帯に在宅すること、宅配便の「翌日」配達を諦めて「翌々日」配達を受け入れること、宅配便の値上げを受け入れることは、宅配便事業者のドライバーをはじめとする従業員の負荷を軽減するために有意義であることは否定できない。
しかしながら、「2024年問題」の中心が宅配便であるが如く報道することは明らかにミスリードであり、日本のメディアには宅配便中心の報道姿勢を根本的に改めて頂く必要がある。国民としても課題設定を変えなければならない。
「2024年問題」の本質は、表3が示す通り日本の総貨物量の90%以上を占める、宅配便以外の貸し切りトラック輸送を中心とする工場間輸送、工場~倉庫・物流センター間輸送などである。具体的には、BtoB貨物輸送の発着両端で発生しているドライバーが荷物の積み込みや積み下ろしを手作業で行っている手待ち・手荷役や、発着地点での待ち時間も含めた長時間運転による長時間労働の解消なのである。
それらを根本的に解決せずに24年4月を迎えた場合、消費者よりもサプライチェーンのもっと上流の工場や倉庫・物流センターの機能に致命的な影響が現出し、延いては消費者にも絶大な影響が及ぶ可能性大である。
次回は、これらを踏まえた上で、日本の物流をグローバルな視点で見つめ直してみたい。