過剰な時間外労働(以下、残業)が当たり前だったトラックドライバーの待遇を改善するため、2024年4月からトラックドライバーの年間残業時間が960時間(月80時間)に制限される。それでも、労働基準法では、一般労働者は720時間に制限されているのだから、トラックドライバーがいかに過酷かということが分かる。
同時に拘束時間と休息時間を定めた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)も改訂される。拘束時間は「年3516時間から3300時間」、「月293時間から284時間」となる。1日の休息期間は「継続11時間を基本として9時間を下回らない」とされる。
アマゾンなどのネット通販の増加などにより荷物量が増え続ける中で、残業時間を規制してこれまで通りの延滞のない物流輸送は可能なのか。
働き方改革の一環として労働基準法が改正され、一般的な会社従業員の残業時間は19年4月(中小企業は20年4月)から規制されていたが、ドライバーは労働環境が異なるため、規制の導入が猶予されてきた。
だが、これ以上長時間労働を放置することはできないとして、国はドライバーの命と健康を守るために、来年4月から残業規制の導入に踏み切ることになった。
車両物流業界はトラック運送と宅配便事業との2種類がある。中長距離のトラック運送は日本通運などの大手があるものの、その大半は中小零細企業が担っている。宅配便事業はヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社で90%以上を占める寡占状態になっている。
トラックドライバーの働き方改革を推進する国土交通省の担当者は「今回の残業規制を機に、少しでもトラックドライバーの地位を改善していきたい。ピンチをチャンスだと考えて、賃上げをはじめとした業界改善を実現させたい。荷主と運送事業者の主従関係を見直し、悪質な荷主に対しては、中小企業庁などと連携して、法執行を強化していく」と意気込む。
しかし、取材したすべての運送会社の経営者は荷主とは根深い主従関係にあることを認めており、日頃から不満を募らせている。