2024年12月22日(日)

Wedge SPECIAL REPORT

2023年4月20日

 業界団体の全日本トラック協会の松崎宏則専務理事は「荷主にご理解をいただけるよう周知を行っているが、なかなか適正な運賃・料金が収受できていないのが現状だ」と指摘する。

30年には35%が
届かなくなる

 野村総合研究所の推計によると、25年に全国の荷物総量のうち約28%が、30年には約35%が運べなくなるという。地域別では30年に荷物が運べなくなる割合が最も大きいのは東北で約41%。四国が約40%、北海道と九州がそれぞれ約39%だ。

 東京〜大阪間など主要都市を結んでいる「幹線輸送」と呼ばれる部分は、前述の通り大手運送会社の2次、3次下請けの中小零細企業が安い運賃で運んでいる。ドライバー不足が深刻化すると、この長距離輸送の部分でほころびが出る恐れがある。現にいまのドライバーの人数では勤務繰りがつかないとして、長時間労働になる長距離輸送から撤退する運送会社も出始めている。一部はフェリーや貨車を使った輸送でしのごうとする動きもあるが、今後は長距離輸送を誰が担っていくのかがポイントになってくる。

 ただし、トラック運送関係者からはこのような声も聞こえてくる。「長距離輸送を担ってきたプロ意識の高いドライバーの中には、運びたい荷物があるのに残業規制で運べなくなり、結果的に収入が減ることへの不満を持つ人もいる」。

規制緩和が
過当競争招く

 もともと運送業界は「免許制」で参入規制がなされていたが、1990年に「貨物自動車運送事業法」と「貨物運送取扱事業法」のいわゆる「物流2法」が施行されて以降、トラック運送事業の規制緩和により自由化されて新規参入が急増したのだ。94年に約4万5000社あったが2007年には6万3000社を超えるまでになった。この結果、事業者間の競争が激化し、その後、事業者数は横ばいで推移している。

 業績を見ると特に中小零細の運輸業者の利益率が低く、東京商工リサーチによると、昨年の運送業の倒産は248件で前年よりも46.7%も増えている。今年2月では燃料費高騰などが経営を圧迫し、昨年の倍以上の25件が倒産。さらに人手不足による倒産件数も増えている。

 トラック運送では、国交省が「標準運賃」を示してはいるが、守らなければならない義務はなく、基本的には自由競争の世界である。このため荷主は安い運賃を受け入れる運送業者に頼む傾向があり、結果的に運賃は安い方に流れがちだ。運送業界の営業利益率は極めて低い数字になり、そこからなかなか抜け出せない。


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