この課題を解決しようと、日本貨物運送協同組合連合会はマッチング技術を駆使して、トラック協会会員事業者のための求荷求車システム「WebKIT」という仕組みを普及させようとしている。ウェブ画面上に運んでほしい側がその情報を表示し、別の会社がこれを閲覧してトラックの運行に合致すれば運送の契約が成立する。「水屋」に頼むよりは大幅に安い手数料で、帰りの荷物を見つけることができる。22年度末現在で、「WebKIT2プラス」に加入している会社は2983社、6551IDにまで徐々に増加してきている。
製造者、配送者
販売者の連携
現在、東京と大阪を結ぶ東海道ルートの中間点の浜松に中継所を設けて、ドライバーが交代して残業時間が増えないような勤務体制を組んで輸送を効率化しようとする動きがある。また、佐川急便と日本郵便は昨年から関東と九州の間でフェリーを使った共同運送をスタートさせている。
製造者、配送者、販売者の連携による持続可能な物流の構築を目指そうという動きも出てきた。今年3月16日に食品スーパー4社(サミット、マルエツ、ヤオコー、ライフコーポレーション)が、今のままでは食品が運べなくなる危機が迫っているとして、食料品の安定供給維持に向けての取り組みを宣言した。具体的には発注時間の見直しや納品期限の緩和などを行うとしている。日本加工食品卸協会の時岡肯平専務理事は「物流を『協調領域』と捉えたこれらの動きは、サプライチェーン全体の物流に大きな改善効果をもたらすものになり、大手小売業が連携して取り組むことの意義は非常に大きい」と指摘する。
岸田文雄首相は今通常国会で「2024年問題」に触れてドライバーの労働条件の改善は急務で、国交省、経済産業省、農林水産省など「政府全体でスピード感を持って取り組みたい」と発言、積極的な姿勢をみせている。
今回こそ、荷主が運送会社より上に立つ関係を是正し、中小零細の運送会社への無理な要求をさせないよう、国としても強力な施策を掲げ、実施すべきだ。「適正運賃」を収受できる体制を作らない限り、残業時間を減らすことができたとしても、ドライバーにとって切実な願いである手取り収入の増加にはつながりそうにない。
一筋縄ではいかないこのテーマは、宅配の荷物が届かなくなるだけでなく、あらゆる物資の輸送全体が行き詰まり、日本経済に甚大な影響を与えかねない重要課題であることを認識しておく必要がある。
トラック運送業界における残業規制強化に向けて1年を切った。「2024年問題」と呼ばれる。 しかし、トラック運送業界からは、必ずしも歓迎の声が聞こえてくるわけではない。 安い運賃を押し付けられたまま仕事量が減れば、その分収益も減るからだ。 われわれの生活を支える物流の「本丸」で、今何が起きているのか─。