2024年4月26日(金)

Wedge SPECIAL REPORT

2023年4月20日

荷主の〝言いなり〟体質から
脱却する

 運送業界がもうからない体質から脱皮できない背景には、荷主の高飛車な要望に対して、運送会社が逆らえず、「荷主が常に上位」という構造がある。その構造を典型的に表しているのが、倉庫などで荷物を積み降ろし(以下、荷卸し)する際の作業だ。普通に考えれば、トラックドライバーの仕事は品物を所定の場所に運ぶことである。したがって、荷積み、荷卸しは荷主側、つまり荷物を受け取る側の業務であるはずだ。しかし、現場ではドライバーが手作業、あるいはフォークリフトを使って荷役をさせられるケースが多い。

 もし「それは私の仕事でないから」と言ってこの仕事を拒否したら、荷主側から運送会社に「ほかの業者を探すから」といって契約を解除されるリスクもある。そもそも契約書がないまま、なし崩し的にこうした周辺業務をサービス残業のような形でやらされている実態がある。

 農産物の集荷・配送に運送会社を使っている全農大分県本部米穀園芸部の松本邦博部長は「大分青果センターでのフォークリフトを使う荷卸しは、地元の運送会社に有料で業務委託しており、荷物を運んできたドライバーにはフォークリフトを使った荷卸しはさせないようにしている。来年4月に残業規制が導入されると、運送業務とフォークリフトを使った荷卸しなどの周辺業務を契約で明確にしておく必要がある。ドライバーにフォークリフトで積み込んでもらったりすると、別に料金を支払うことも考えておくようにと現場には伝えている」と注意喚起をしているという。

 荷主の〝言いなり〟になる関係性はそれだけではない。幹線輸送の発着点となる物流センターは、大手運送事業者ごとに、トラックが接車し、荷卸しなどを行う「トラックバース」のホームの高さが異なっているという。そのため、トラックの荷台の高さを、それぞれの会社ごとに合わせなければならない。しかし、中小零細企業には、何種類ものトラックを保有したり、車両を改造する経営体力はない。結局、1社だけに紐づかざるを得なくなり、他社の仕事に移ることもかなわず、従属せざるを得ない、という関係性になるとされる。

 また、何時間も走る長距離輸送で目的地に荷物を運んだものの、帰りの荷物がない「片荷」になるという問題もある。帰りの荷物がないと輸送費だけかかり経営的には効率が悪い。この非効率をなくすためには、自前で何とか行った先で荷物を見つけなければならない。

 とはいえ知らない場所ではすぐに帰りの荷物を見つけるのは難しい。これを斡旋する「水屋」と呼ばれる業者がいる。しかし、「水屋」は、「片荷」になる業者から、輸送代の数割も手数料を取ることもあるという。それでもカラで帰るよりはましのため、「水屋」のお世話になる業者も多い。


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