脱炭素の救世主といわれるエタノール混合ガソリンが世界中で普及している。日本でも今年11月になって、ようやく経済産業省が導入方針を決めたが、なぜか大手メディアの関心は極めて低い。
12月上旬、米国を訪れ、エタノール混合ガソリンの最新事情を取材し、そこには消費者へ大きな経済的利益が生じていることが分かった。日本はもはや周回遅れといって間違いない。
世界では「E10」が当たり前に普及
いま世界で普及しているのは、エタノールが10%混合された「E10」と言われるガソリンだ。「E」はエタノールの頭文字。「10」は10%の意味だ。
このエタノールは植物由来のため、バイオエタノールとも言われる。エタノールとはアルコールのことだ。アルコールで車が走るのかと思う人がいるかもしれないが、エンジン車はアルコールで走ることができる。
現在、「E10」は米国、英国、カナダ、フランス、ドイツ、中国、タイ、フィリピン、インド、インドネシアなどで販売されている。サトウキビからエタノールを大量に生産するエタノール先進国のブラジルでは「E27」(法律で27%の混合を義務化)のほか、「E85」まで普及している。
これに対し、日本では名古屋を拠点に石油製品の輸入・販売を手掛ける中川物産が23年6月から、日本で唯一「E7」ガソリンを名古屋市内の3店舗で販売しているに過ぎない。ただ、この「E7」のことも大手メディアがほとんど報じないため、「E10」はおろか「E7」のこともほとんど知られていないのが日本の実情である。
日本もようやく導入
もはや日本では「E10」の普及は絶望的かと思っていたら、11月11日、経産省は同日開かれた有識者会議でガソリンに混ぜるエタノールの導入を決めた。同会議資料によると、「石油元売りに対し、2030年度までにエタノールを最大10%混ぜた燃料の供給を求め、40年度までに最大20%までの混合を目指す」という。この国の方針は読売新聞がいち早く報じ、続いて朝日新聞と共同通信が報じた。
周回遅れとはいえ、エタノールを導入する意義は大きい。トウモロコシやサトウキビなどの植物を発酵して作られるエタノールは脱炭素の救世主だからだ。