2025年5月23日(金)

Wedge REPORT

2025年4月20日

 商社やメーカーで海外業務に従事してきたビジネスマンが定年退職後に海外放浪して見聞きした諸外国の事情をリポートする連載「古希バックパッカー海外放浪記」。2025年1月~4月には、インドの旅が13回にわたり掲載された。経済的な急成長、格差社会、独自外交による国際情勢のキープレイヤーなど、様々なイメージを持つその国の知られていない一面をいくつも見せた。

 “汚い・不潔”といった印象を持たされる都市の環境、そうした中での食事事情、「ベジタリアン大国」と言われる人々の健康状況、イスラエル人との“関係性”と驚きを与える。特に人気のあった5本の記事を紹介する。

<目次>

・イスラエル人はなぜ、そんなにインドが好きなのか?「イスラエルがガザ侵攻をやめない本音と言い分」を若者たちに聞いてみた(前半)(2025年2月2日)

・“汚い・不潔”の印象に尽きるインドの中でも別世界!清潔で酒も飲める南国パラダイスのケララ州を歩く(2025年2月16日)

・【なぜインド旅はキツイのだろうか?】季節外れの南インド、迷走彷徨の果てに(2025年1月19日)

・ベジタリアン大国インド、なぜ平均寿命が短い理由を考えてみる(2025年3月9日)

・〈結論:フツウのインドの食堂料理は日本人には食べられない!〉インド旅行は高くても一流の旅行会社のツアーに参加したほうがいい理由(2025年1月25日)

イスラエル人はなぜ、そんなにインドが好きなのか?「イスラエルがガザ侵攻をやめない本音と言い分」を若者たちに聞いてみた(前半)

インド南部ケララ州のバルカルは欧米人に人気の景勝地。インド洋を望む延々と続く断崖絶壁の下に白い砂浜が広がる。かつて英国人はインドのドーバーと呼んだ

 イスラエル人、特に若者はインドが大好きである。インド各地で頻繁にイスラエルの若者に出会う。彼らによると理由は①インドは緑豊かで山も海もある、②いわゆる“葉っぱ”を吸ってビールを飲んでリラックスできる、③航空運賃が安いこと(『「Youは何しにインドへ」、インドで聞くイスラエル問題』参照)。

 いかに多数のイスラエル人がインド旅行しているか明白に物語るのがインド各地の観光地のレストランで見かける「イスラエル料理あります」の看板である。しばしばヘブライ語でも表記されている。

 今回の南インド旅はイスラエルがガザに侵攻して1年数カ月が経過した時期であったのでイスラエル人が何を考えているか、より本音に近い切実な声を聞くことができたように思う。

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“汚い・不潔”の印象に尽きるインドの中でも別世界!清潔で酒も飲める南国パラダイスのケララ州を歩く

アレッピーの海岸に並ぶ漁船、この付近はカトリック教徒が多い

 承前。本編第1回、第2回にて詳述したが、筆者の率直な感想を吐露するとインドの町の第一印象はいずれの都市でも“汚い・不潔”に尽きる。その一つの根源は無数の聖牛、要するに“野良牛”が無差別にばらまく糞尿”である。

 ヒンズー教では建前上は牛を崇め奉ることになっているが、インド各地で見かける聖牛の実態は皮肉なことに“惨めな野良牛”である。一部の熱心なヒンズー教徒が毎朝餌になる草を与えているケースもあるが、それでも足りない。野良牛は街中の少ない雑草を食べ、さらには残飯を求めゴミを漁り、常に食べ物を求めて街路をさまよう。商売の邪魔になるので店先に居座る野良牛を商店主が木の棒で無慈悲に叩いて追い払うのは日常的光景である。どの店でも店先に牛追い棒が置いてある。

 ポルトガル・オランダ・英国の支配を受けたコーチンの旧市街、旧ポルトガル領のゴア市街、旧フランス領のポンディシェリー市街は植民地時代の建築物が異国情緒を誘いロマンチックな風情を感じるが、こうした地域では植民地時代からの伝統が生きているのか野良牛をほとんどみかけない。つまり野良牛がいないインドの街では、多少ゴミはあるものの西洋の街角のように整然とした雰囲気を醸し出しているのだ。

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【なぜインド旅はキツイのだろうか?】季節外れの南インド、迷走彷徨の果てに

バンガロールの下町シティー・マーケット付近の交差点

 都市名は変わったが35年前と変わらないムンバイ(旧ボンベイ)。正直なところインドは喜んで行きたい国(destination)ではない。今から35~36年前の現役時代にボンベイとニューデリーにそれぞれ1週間くらい出張しただけで縁がなかった。11年前に還暦定年退職して以来インドには過去3回長期旅行している。北インド3カ月、東インド2カ月、西インド2カ月。そして今回の南インド3カ月は4回目。

 筆者は二足歩行ができる限り未知の世界を放浪することを退職後の残りの人生の目的(mission)と思い定めた。そんな筆者にとり広大かつ複雑多様なインドを知らずして本物のバックパッカーとは言えない。そんな思いから意地になって苦手なインドに4度目、そして恐らく最後のインド旅をしてきた。

 インドは過去十数年で飛躍的に経済発展した。しかし今回インド到着初日にムンバイで痛感したのは35年前と根本的には何も変わっていないということだ。大通りはバイク、リキシャ(三輪車タクシー)、四輪車、バスなどがひしめき合って交通信号は機能しない。しばしば荷車や牛や犬が車道をふさぎ歩行者は縦横無尽に横断して粉塵と排気ガスと警笛の騒音がカオスを形成している。

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ベジタリアン大国インド、なぜ平均寿命が短い理由を考えてみる

ターリ(ベジタリアン定食)。ボーイがチャパティ3枚持って来たが食べきれないので断った。ライスだけでも残すほどの量。この店は比較的カレー類を入れる容器が大きい

 インドを旅していると町角の電柱などに貼られた死亡広告をしばしば目にする。男性だと50代後半や60代が少なくないことに驚く。2022年の世銀報告ではインド人平均寿命は68歳。アレッピーの食堂で奥に旦那の遺影が飾ってあったので女将に聞くと数年間の心臓病の闘病を経て昨年62歳で亡くなったという。

 世銀報告は平均寿命が短い原因として衛生環境、医療の遅れ、栄養失調(幼児・子供の)、糖尿病、幼児死亡率、感染症を指摘していた。インドはヒンズー教など宗教の影響でベジタリアン大国のはずなのに平均寿命がどうして短いのだろうか。

 10月16日。ゴアのアルジュナ・ビーチのホステルのマネージャーは屈強なアラフォー男のヒンズー至上主義者。ヒンズー教は殺生を禁じているので食肉はタブーであるという。彼自身は穀物・野菜以外は蛋白源としてミルク、バター、チーズ、鶏卵を食べていると。肉類ではチキン・カレーなどチキンだけは食べるようだ。そして海が近いので魚も食すという。彼の話すようなセミ・ベジタリアン生活であれば健康的ではないか。

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〈結論:フツウのインドの食堂料理は日本人には食べられない!〉インド旅行は高くても一流の旅行会社のツアーに参加したほうがいい理由

バス・ターミナルで客待ちしている三輪車タクシー(リキシャ―)のドライ バー。一般に英語がほとんど通じないドライバーが多く、外国人の客が来ると多少なり とも英語を話すドライバ―が代わりに行き先の確認と値段交渉をする

 時間と手間を節約するため旅行代理店で予約切符を購入する場合には手数料が極めて曖昧で相手次第ということを甘受せねばならない。同じ区間で夜行寝台列車と夜行バスを比較すると一般的にバスの方が割高である。列車は国営鉄道なので運賃体系が低く抑えられている。バスは私営バスに対抗して公営バスも最新型バスを導入して価格設定し、シーズンにより料金を変動するので列車より割高だ。

 代理店で列車のチケット購入する場合は切符料金+代理店手数料を払う。切符料金は切符に明記されているが代理店手数料は不透明で“言い値”である。代理店が客の様子を見て合計金額を請求するのだ。シーズンで列車の切符が入手困難でバスも値上がりしている状況なら代理店手数料を吹っ掛ける。

 代理店手数料は町から駅までの往復の三輪車タクシー代+手間代が基本である。ちなみにバルカラからカンニヤークマリまでは正規切符料金800円に対して代理店手数料900円であった。バス乗り場が不便な場所にあり列車も連日満席であることから代理店のオヤジに足元を見られたのだ。

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