それでは、重量ベースで日本の運輸業の90%以上を占めるトラック運送業の実態に焦点を当てて行きたいと思う。
何が労働生産性を下げているのか
ここでは、15年度に国土交通省が実施した「トラック輸送状況の実態調査」の報告書の内容をベースに、日本のトラック運送業の実態について話ししていく。
この調査は、15年9月に1252社のトラック運送業者、5029人のトラックドライバーを対象に、またドライバーの拘束時間については、運行数2万7266件を対象に調査が行われた。
図2は、その調査のうちドライバーの拘束時間とその内訳の平均値を帯グラフで示したものである。
全運行数の半分近く、46%の1万2537件の運行で手待ちが発生しており、それら運行の平均拘束時間は13時間27分、平均手待ち時間は1時間45分、平均荷役時間が2時間44分であるのに対し、平均運転時間は拘束時間の半分未満である6時間41分となっている。
全運行数の54%の1万4729件の運行では手待ちは発生しておらず、平均拘束時間の11時間34分に占める平均運転時間は6時間21分と平均拘束時間の半分を超えてはいるものの、平均荷役時間は2時間49分と平均拘束時間の約4分の1を占めている。
この調査の一環としてトラック運送業者に対して、車両留置料や荷役料金を収受できているかにつき確認が行われているが、車両留置料については90%前後が、荷役料金については75%前後が収受できていないと回答している。
すなわち、日本のトラック運送業者の大多数は、手待ちや荷役作業が発生しても留置料も荷役料金も収受できておらず、しかもドライバーの拘束時間の半分前後の運転時間だけを運賃として収受していることがこの調査を通して判明したということなのである。
このような状況に置かれている日本のトラック運送業者の経営が厳しい状態にあることは、皆さんも容易に想像できるであろう。表1は、トラック運送業者の規模別に営業損益・経常損益を示したものであるが、本業ではほとんど赤字状態で、本業以外でなんとか金を生み出して、経常利益をひねり出しているのが日本のトラック運送業者の実態なのである。そして、規模の小さい事業者ほど、経営状況は厳しくなっている。