トレーラー輸送普及に
必要なこと
筆者は、トレーラー輸送の普及がドライバーを発着の手荷役や手待ちから根本的に解放する最大の要件であると考えている。狭い日本ではトレーラー輸送の実施は不可能であるという意見が現時点では大勢を占めているのは、4フィート(約1.2メートル)の高床式ドックを備えた倉庫〈日本の倉庫や物流センターの多くはプラットフォームを設けていない低床式。高床式は建設や維持のコストがかかるが、荷役効率は高いとされている〉や物流センターを普及させる必要があり、そのためには住宅と工場・倉庫の建設エリアを明確に分けるといった行政側の取り組みも不可欠である。
こうした日本の環境に対し、コストコのロジスティクスは米国式ロジスティクスを日本の環境に適応させながらベストプラクティスとしてでき得る限り再現したものと言える。ただ、そうは言っても物流関係事業者の方がトレーラー利用等については、日本の企業がすぐに対応することは困難と感じるかもしれない。しかしながら、荷主が事前予約制を導入して約束した時刻や時間帯を確実に守ること、パレットの規格を統一し発着荷主側が積み降ろしの荷役を行うことは十分可能である。それがトラックドライバーの手待ち時間と荷役時間を改善し、日本のトラック運送事業の生産性を向上させ、ひいては「2024年問題」をソフトランディングさせることにつながるであろう。
詳しくは筆者が執筆したWedge ONLINEの連載「「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟」内の記事をご覧頂きたいのだが、「2024年問題」を乗り越えて日本のロジスティクスを世界標準にまで高めるためには、コストコが実施しているような取り組みを官民一体となった中長期的な実現の見通しと、できるところから取り組んでいく姿勢が肝要だろう。
また、工場や倉庫の立地を決めているのは製造業者や物流事業者であることを考えると、それら民間企業が公助に頼るばかりでなく、工場や倉庫の建て替え等の機会を積極的にとらえて、工場や倉庫の建設が認められている工場専用地域・工業地域・準工業地域の中から、可能な限り住宅との混在の可能性が小さい立地を選択することも一つの解になる。トレーラー輸送を前提としたヤードや建屋のデザインを導入することが極めて重要であろう。そのような動きが点から面へと拡がっていった時、日本の物流は「2024年問題」を乗り越えて、次の時代に入ることができるのではなかろうか。