イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は26日、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラム組織ハマスとの戦闘終結に向けた協議に代表団を派遣する方針だと述べた。ただ、アメリカのカマラ・ハリス副大統領がガザでの「悲劇」について「私は黙らない」などと述べたことについては非難した。
ネタニヤフ氏はこの日、共和党のドナルド・トランプ大統領候補と会うため、フロリダ州の私邸マール・ア・ラーゴを訪問した際に、代表団の派遣に言及した。
前日の24日にはワシントンで、ジョー・バイデン米大統領とハリス副大統領と会談し、ガザ停戦への取り組みについて話し合っていた。
バイデン政権は、イスラエルとアメリカはこの問題をめぐる「溝」を埋めつつあるとしている。しかし、民主党の大統領候補になる見通しのハリス氏は24日、戦闘が続くガザの市民が受けている「悲劇」と「苦しみ」について「私は黙らない」と述べ、すべての当事者に停戦合意に達するよう求めた。
「イスラエルが安全な場所となり、すべての人質が解放され、ガザのパレスチナ人の苦しみが終わり、パレスチナ人が自由・尊厳・自己決定の権利を施行できるようなかたちで、この戦争を終わらせる時だ」と、ハリス氏は述べた。
「おそらく週明けに」代表団派遣と
ネタニヤフ氏はトランプ候補との会談後、イスラエルは「おそらく週明けに」イタリア・ローマでの停戦協議に交渉担当者を派遣するだろうと述べた。
ネタニヤフ氏は、イスラエル側が「軍事的圧力をかけたため」、停戦への取り組みで「いくらかの動き」があったとした。
ただ、「ハマス側がイスラエルとアメリカの間に隔たりがないことを理解している場合に限り、取引の進行が早まると思う」とし、「私は（ハマスの）発言でその状況が変わってしまわないよう望む」と述べた。
ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部に侵入し、イスラエル人を中心に1200人以上を殺害、251人を人質に取った。人質の多くは今もガザで捕らわれている。
ハマス運営のガザ保健省は、同地区へのイスラエル軍の報復攻撃でこれまでに3万9000人以上が殺害されたとしている。
国際刑事裁判所（ICC）のカリム・カーン主任検察官は今年5月、ガザでの戦闘をめぐる戦争犯罪容疑で、ネタニヤフ氏とハマスの複数指導者らの逮捕状を請求した。ネタニヤフ氏もハマス側も容疑を否定している。
ローマでの協議は、ガザ戦争の終結に向けた一連の取り組みにおける最新の動き。アメリカは米中央情報局（CIA）のウィリアム・バーンズ長官を派遣する。カタールやエジプト、イスラエルの代表団との協議は28日に開始される予定。
代表団は敵対行為の終結と、今もガザで拘束されている人質の返還に向けた取り決めについて協議する。
トランプ候補、大統領になれば「和平追求」
トランプ候補は26日、11月の米大統領選で自分が再選されれば、和平を追求することを約束するとし、ハリス氏の24日の発言はイスラエルに対して「無礼」だと非難した。
また、自分とネタニヤフ氏の関係は「常に良好だ。私がイスラエルのためにしてきたのと同じことをやった大統領はほかにいない。私たちは常に、非常に良い関係を築いてきた」と述べた。
トランプ前政権は、中東やイスラエルに関するアメリカの長年にわたる政策のいくつかを覆した。例えば、2018年には、在イスラエル米大使館をテルアヴィヴからエルサレムに移す決定を下した。
イスラエルはエルサレムを「永遠で不可分の」首都としている。一方でパレスチナ人は、1967年の第3次中東戦争でイスラエルに占領された東エルサレムを、将来パレスチナが独立した際の首都にすると主張している。
そのため、米大使館の移転決定によって、将来的に東エルサレムをパレスチナ国家の首都にするという長年の目標が危うくなると、パレスチナ人とその同盟国は激怒した。
トランプ前政権はまた、オバマ政権下で締結されたイランとの核合意から離脱した。この合意は、イランが核計画を制限することと引き換えに、国連と米国、欧州連合（EU）が同国に科していた経済制裁の解除を定めたもの。トランプ前政権のこの動きをイスラエルは支持したが、欧州諸国からは批判を受けた。
2020年には、イスラエルと近隣のアラブ諸国との関係正常化を目的とした「アブラハム合意」を締結させた。
さらには、エルサレムをイスラエルの首都とし、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区のイスラエル入植地でイスラエルの主権を認めるという、いわゆる「トランプ和平案」を2020年に発表した。パレスチナ自治政府はこれを即座に退けた。
