2024年10月6日(日)

未来を拓く貧困対策

2024年7月8日

 2024年5月24日、大津市で保護司をしていた新庄博志さん(60歳)が殺害された。殺人の疑いで逮捕されたのは、新庄さんの担当する保護観察対象者(以下、対象者)(35歳)であった。保護司が保護観察中の対象者に殺害された例は過去になく、関係者に大きな衝撃を与えている。

保護司を殺害した疑いで逮捕され、送検された保護観察対象者を乗せた車(時事)

 報道各社も事件を取り上げているものの、「罪を犯した人と夜間に自宅で面接をする。それも1人で」という状況に戸惑いの声も聞かれる。知られざる保護司の活動実態について、総務省の調査報告書を通じてその姿に迫る。

メディアは「早急に再発防止策を」

 筆者が調べた範囲では、この事件を熱心に報道しているのは読売新聞である。事件直後から対象者の逮捕、大津地裁による鑑定留置開始までの経過を詳細に報じている。

 県警によると、新庄さんは5月24日午後7時から、対象者と自宅で面接する予定だった。インターホンのカメラには、対象者が予定と同じ時間帯に訪問する姿が記録されており、県警は玄関から入ったとみている。対象者は6月8日に逮捕、調べに「私はやっていない」と容疑を否認している(読売新聞、2024年6月10日)。

 対象者は、職場になじめず転々と仕事を変えていた。また、対象者のものとみられるX(旧ツイッター)のアカウントには、保護観察への不満や反社会的な姿勢を示す投稿がみられた(読売新聞オンライン、2024年6月9日)。

 さらに、「1人で向き合う不安」「自宅で面接 安全対策に課題」として、保護司が過去に担当していた男性から殺害された事件が起きていること、保護観察中の少年による保護司の自宅放火をきっかけに物的補償の制度ができたことなどを紹介している(読売新聞オンライン、2024年6月11日)。 

 そのうえで、社説で再発防止策として、面接場所として公共施設を使いやすくすること、複数人面接の導入、篤志家頼みの制度の見直しなどを提言している(読売新聞オンライン、2024年6月11日)。

 とはいえ、限られた紙面の中では、保護司の活動実態を詳しく伝えるのには限界がある。今回の記事では、総務省がまとめた報告書を紐解きながら、保護司の活動実態を解説していこう。


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