2024年12月22日(日)

現場搾取社会を変えよう

2024年6月25日

 筆者は3年ほど前から、本業のかたわら副業に挑むホワイトカラーの40~60代の中高年男性を取材している。彼らは、生活費の補てんやセカンドステージの模索など、さまざまな理由で副業に取り組んでいる人たちだ。

(イラストレーション・平井さくら)

 ホワイトカラーの副業といえば、投資やブログの執筆、コンサルなどが思い浮かぶかもしれない。しかし現実は厳しく、まとまったお金を稼ごうとすると、フードデリバリーや物流倉庫の作業、居酒屋の皿洗いなど、学生がアルバイトでやるような肉体労働にたどり着くケースが多いのである。

 だが、取材では意外な事実も明らかになった。

 副業を通して「本業とは違う友達ができた」「お客さんから『ありがとう』と直接言ってもらえてうれしい」「学生時代のバイトや部活みたい」など、「世界が広がった」という感想を述べる中高年男性が多くいたのである。

 日々、電車で通勤し、オフィスに出社し、「会社の上司・同僚・部下」たちと普通に仕事して、家に帰る─。こんな毎日を送るオフィスワーカーが副業をする。すると彼らは自分たちが実は狭い世界で生きていることに気づかされるのだ。

ラブホテルの清掃って
どんな仕事?

 実際に筆者もいくつかの副業現場を潜入取材した。例えば、中高年男性が取り組んでいた副業の一つに「ラブホテルの清掃」がある。本業のかたわら夜か土日に副業するとなると、こうした仕事になるのだ。

 正直申し上げると、ラブホテルには抵抗があった。「怖い人が出てこないか」「汚い仕事では?」。いろいろな「偏見」が頭に浮かんだ。しかし、実際の現場は想像とは違っていた。

 アルバイトしたラブホテルでは、清掃は3人一組で行っていた。一緒に働いたのは20~50代の男女。30室ほどある部屋のベッドメイクは大変だ。ダブルベッドの布団カバーやシーツの付け替えは、チームワークが欠かせない。協力して作業するうち、スタッフともすっかり仲良くなった。ラブホテルという特殊な場所であることも、連帯を深めやすいのかもしれない。

 そもそも人と協力して、汗をかき、「お疲れ様」と言い合うのは単純に気持ちがいい。「労働って本来こういうものだよな」。普段パソコンの前に座っている時間が長い人間としては、いろいろ考えさせられた。

 ホテルの支配人から「週2日でいいから来てください」と言われて、真剣に行こうか悩んだ。普通にこの仕事が楽しかったのだ。

 しかし、昼間の時給は東京都の最低賃金だった。


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