時間外労働の上限時間が制限されることによって発生するとされる「2024年問題」が目前に迫っています。「Wedge」2023年9月号に掲載されている「きしむ日本の建設業 これでは国土が守れない」記事の内容を一部、限定公開いたします。
「現場の課題と仕事の醍醐味とは?」。この道30年のベテラン大工の本音に迫る。
片山淳一さん(仮名)50代・大工
私が建設業界に入ったのは、学生時代のアルバイトがきっかけです。当時はバブル景気の真っ只中で、今と同じように職人が不足していた。学生バイトにも1日1万2000円を支払ってくれたほど。現場にはいい人が多くてね。だから一般企業には就職せず、大工の道に進むことにしました。昔も今も大卒の職人なんて珍しいです。今となってみれば、人生を間違ったのかもしれません(苦笑)。
大工をやって30年以上経つので、現場の職長を任され、若い人を教える機会も増えています。でも日当は1万8000円です。残業すると少しは増えますが、学生バイトの30年前とそんなに変わらない。業界以外の人は驚くでしょう。これが建設現場の現実です。
国交省が「職人の賃金を上げるため」と始めたCCUS(建設キャリアアップシステム)によって給与に還元されているという実感はない。それなのに登録料だけはしっかり取る。制度をつくった人の意図は私には分かりませんが、CCUSを運営しているのは国交省の関連機関なので、自分たちの居場所づくりのためなのではないかと穿った見方をする職人が多い。
やはり国交省が推進する「週休2日制」も評判が悪い。現場はどこも週休1日で動いています。それでも人手が足りず、工期に間に合わせるのがやっとの状態。週6日でやっている仕事を5日ですることになれば、今でも厳しい現場の負担がさらに増すだけ。