休みが増えれば、そのぶん私たちの収入も減ってしまう。役所が本気で「週休2日になれば職人を目指す人が増える」と考えているとしたら首をかしげざるを得ません。今年10月から導入される「インボイス制度」も個人事業主の「一人親方」には大打撃。いっそう職人が減るに違いない。
誰が大規模プロジェクトを行うのか
建設業界の問題は、大手ゼネコンにあるのではないかと個人的には思っています。「スーパーゼネコン」と呼ばれる大手の売上高は、どこも年1兆円を超えている。その売上高をもっと増やそうと、施主から安い価格でプロジェクトを受注する。ゼネコンは受注額が安かろうと〝中抜き〟するので基本的に損はしない。そのぶん割を食うのは、安い単価で仕事を割り振られる1次以下の下請けです。1次下請け、2次下請け、そして末端の職人へと、ゼネコンのツケが順番に回されている。
私は1次下請け業者の社員ですが、社長は普段からもちろん、コミュニケーションなのでしょうが、ゼネコンの担当者たちの夜の会食に励んでいます。少しでもよい条件で仕事をもらおうとしてのこと。スーパーゼネコンから回ってくる仕事は年単位の大型プロジェクトが多いんです。だから安く叩かれても、長期の仕事を確保しようと請けてしまう。
大型プロジェクトには、ゼネコン関係者が数十人常駐します。私たちが働く現場は夏の暑さは過酷です。一方、関係者のいるオフィスはエアコンが効いた快適な空間。多くは派遣社員のようですが、ゼネコン本体からも現場トップの所長以下、何人か派遣されている。私たちレベルでは、彼らが何をやっているのかよくわかりません。
昔の所長には温かみのある人がいました。私たちの前で「現場が動くのは職人の皆さんのおかげ」と頭を下げ、皆に弁当を差し入れてくれるような所長もいた。そんな話はなくなり、今は事務的なやりとりがある程度です。
東京オリンピックは終わりましたが、これからも全国各地で大規模な再開発プロジェクトが目白押しです。ゼネコンや政府は大歓迎なのでしょう。しかし職人は全然足りないのに、いったい誰が実際の仕事をするんですかね? 「再開発」だと浮かれてスクラップアンドビルドを続けていれば、そのうち現場は破綻し、次々と大問題が起きることは目に見えています。