2024年12月22日(日)

Wedge2023年9月号特集(きしむ日本の建設業)

2023年8月24日

建設業界の魅力を高めるには、これまでの業界慣行の抜本的見直しが不可避だ。
どのような点がポイントになるのか。土木学会会長も務めた森地茂氏に聞いた。
森地 茂(Shigeru Morichi) 政策研究大学院大学 客員教授、名誉教授 東京工業大学名誉教授、東京大学名誉教授。土木学会会長、運輸政策研究所長などを歴任。専門分野は国土政策、交通政策。編著に『人口減少時代の国土ビジョン 新しい国のかたち「二層の広域圏」』(日本経済新聞社)、『都市の未来―21世紀型都市の条件』(同)。

 建設業が将来にわたって持続的に使命を果たし続けるためには、これまで〝当たり前〟とされてきた業界慣行の見直しは不可避である。

 喫緊の課題は、技術力をどう維持し、高めていくかだ。

 今、建設業の現場では、環境影響評価などに代表されるように、報告に必要なさまざまな書類仕事が増えている。もちろん必要な業務であるが、どうしてもオフィスワークの比重が増える。

 当然だが、技術力を高めるには現場のことをよく知っておく必要がある。事故が起こる兆候などを察知するのも、極めて重要な能力である。これらは机上で養うことはできない。その書類仕事は本当に必要なのか、あるいは、どうすれば簡潔にできるのかをよく考え、技術者をより多くの時間、現場に立たせるべきだ。

 現場の仕事の魅力を高めることも必要である。そのためにはまず、給料を上げるべきだ。ただし、これには、会社の組織や人員配置のあり方にもメスを入れる必要があり、これらとセットで考えなければならない。

 例えば、会社には数多くの中間管理職がいる。もちろん、彼らには、部下社員に技術的な指導をしたり、上下間の調整業務やマネジメント業務などの重要な役割がある。職責をしっかり果たせる人ばかりなら話は別だが、そうでない中間管理職が必要以上にいる場合もある。現場で働く人たちの給料を増やすためには、中間管理職の適切な人員配置の問題にも目を向けなければならない。


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