2024年6月21日(金)

Wedge2023年9月号特集(きしむ日本の建設業)

2023年8月20日

「Wedge」2023年9月号に掲載されている「きしむ日本の建設業 これでは国土が守れない」記事の内容を一部、限定公開いたします。

 気温40度近い猛暑が続いていた7月末のある日──。午前11時、東京都内の大型ビル建設現場の地下で、黙々と鉄筋を運び続ける2人のフィリピン人実習生の姿があった。

フィリピン人実習生のエーロンさん(右)と、ダホトイさん(左)。エーロンさんは実習生のリーダー的な存在として皆をサポートしている(Wataru Sato)

 地下の現場は地上にも増して蒸し暑い。じっとしていても、全身から汗が滲み出してくるほどだ。

「暑いでしょ? 大丈夫?」

 実習生の1人で、日本で働いて5年目になるエーロン・ガンゴソ・アロハドさん(38歳)が、われわれ取材班を気遣って声をかけてくれた。エーロンさんには数日前、所属先の会社で話を聞いていた。

 建設現場の仕事は、大工や土工、鉄筋工、とび、左官、内装など多くの職種に分かれている。エーロンさんは鉄筋工で、この現場の仕事を会社が請け負い、派遣されている。

 鉄筋工の役割は、建物の基礎である「躯体」の骨組みとなる鉄筋を組むことだ。現場によっては鉄筋の重さは40キログラムを超える。普段から筋トレで鍛え、ベンチプレスでは選手並みの200キログラムを上げるエーロンさんであっても、長時間の仕事は楽ではない。

 「鉄筋を運ぶだけなら大丈夫。ただ、腰はきついですね」

 この日、エーロンさんとタッグを組んでいるのは、今年6月に入社したばかりのフィリピン人実習生、ダホトイ・フェリペ・ネポムレノさん(33歳)だ。周囲で足場作りをしているとびにも、実習生らしき外国人が目立つ。

 「ここの現場では1000人くらいの職人が仕事をしていますが、200人ほどは外国人実習生じゃないですかね。大規模な現場は、どこもだいたいそんな感じです」

 現場を案内してくれたエーロンさんの日本人同僚はそう話す。

 近年、建設業界では現場を担う職人の不足が著しい。実習生をはじめとする外国人労働者抜きでは、もはや仕事が回らない状況なのである。

募集に200万円かけても
人が集まらない

 エーロンさんたちが所属するのは、東京・八王子市の鉄筋工事専門会社「みのわ」だ。同社の箕輪武志代表取締役(51歳)は、人手不足の実態をこう話す。


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