2022年11月27日(日)

WEDGE REPORT

2022年6月29日

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安田峰俊 (やすだ・みねとし)

ルポライター

広島大学大学院文学研究科博士前期課程修了。『八九六四「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)で第5回城山三郎賞・第50回大宅壮一ノンフィクション賞をW受賞。近著に『「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本』。

船内を歩くインドネシア人労働者(Soichiro Koriyama)

 2021年10月末時点で、約172.7万人いる日本の外国人労働者のうちで国籍別のトップはベトナム人(約45.3万人)で、全体の26.2%を占めている。さらに人数順に並べると、中国、フィリピン、ブラジル、ネパール……と続く。インドネシアは6番目で、全体の3.1%の5万2810人。決して少ない数ではないが、全体的に見ればささやかだ。

 ただ、これも業種による。実は漁業分野においては、インドネシア人の存在感は圧倒的に大きいのだ。沿岸部のカキなどの養殖や、定置網漁業の現場にはまだベトナム人や中国人もみられるが、沖に船を出して自然の海産物を収穫する漁撈船の世界はインドネシア人ばかりなのである。

 今回、金虎丸漁業(静岡県下田市)で取材に応じてくれたのは、同社で働く5人のインドネシア人漁師たちだ。技能実習生を経てから在留資格「特定技能」(2019年に開始された就労可能な在留資格)で日本に滞在している。キャリアの浅い20代の3人は月の基本給20万円程度だが、水揚げが多い月は歩合給が増えるため、40歳前後のベテランである2人は月収130~160万円の高給取りとなっている。

 なかでもキャリアが最も長い、インドネシア・スラウェシ島出身の41歳のヤントは、外国人でありながら、気仙沼を母港とする漁船の船長だ。漁師の仕事は、激しい船酔いや出漁中のリスク(漁具で大ケガをした場合もすぐ救急搬送されるとは限らない)が大きく、なにより冬の海であれば落下しただけで死につながる非常に過酷な労働環境なのだが、登りつめればしっかりリターンもある。

 「漁業関係者のインドネシア人の場合、技能実習生は割とエリートでもある」

操舵するヤント船長。この日は自分の船ではなく、下田にある会社の船に乗り込んだ(Soichiro Koriyama)

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